ヴィーガンが避ける五葷(ごくん)理由|五葷を食べるメリットを管理栄養士が解説

ヴィーガンと五葷(ごくん)の関係性とは?食べない理由や食べるメリットを解説

ヴィーガンのなかには、五葷といわれる一部の野菜を避けるスタイルの方がいます。なかには、「ヴィーガンだから、何となく五葷は食べないようにしていた」という方もいるのではないでしょうか?とはいえ、そもそも五葷とはどのような野菜が含まれるのか、なぜ避けなければならないのか気になる方も少なくありません。そこで今回は、ヴィーガンが五葷を避ける理由や、これらの食材がもつメリットについて解説します。

五葷(ごくん)とは

五葷とは、ねぎ、玉ねぎ、にんにく、にら、らっきょうなど、臭いが強く刺激のある野菜を指します。ただし、住んでいる地域や時代背景などにより避ける食材が異なる場合もあるようです。

五葷を食べないヴィーガンと食べるヴィーガンの違い

ヴィーガンは動物性食品を一切口にしません。しかし、五葷に関しては食べる方と避ける方にわかれます。例えば、インドやアジアの地域では、五葷を避けるオリエンタルヴィーガン(ベジタリアン)が多い傾向がありますが、欧米諸国のヴィーガンのなかには五葷を意識せずに食生活に取り入れている方もいます。

両者に共通している理由として健康や動物保護などが考えられますが、オリエンタルヴィーガンの場合は、体調を維持する目的で五葷を避ける傾向があるようです。

特に、ヴィーガンは肉や魚などの動物性食品を一切口にしないスタイルのため、五葷を食べるとかえって刺激が強すぎてしまうおそれがあります。にんにくに含まれるアリシンは、豚肉に含まれるビタミンB1の吸収をサポートする働きがありますが、肉を食べないヴィーガンにとって刺激となってしまう場合があるからです。そのため、オリエンタルヴィーガンを選択する方もいるため、ヴィーガンでも体調が優れないときは五葷を除いて様子をみても良いかもしれません。


なぜオリエンタルヴィーガンは五葷を食べないのか?

五葷を避ける理由に、仏教が深く関わっているといわれていることをご存知ですか?仏教では五葷ではなく五辛と呼ばれることもあり、ねぎ、ニラ、らっきょう、にんにく、あさつきが該当します。

曹洞宗の開祖である道元禅師が記した「典座教訓」や「赴粥飯法」では、修行における食事の大切さが説かれています。これは道元禅師が中国の宋で「食」自体を修行と位置づけて修行する姿に感動して、持ち帰ったとされる教えです。今まで日本の仏教には調理を修行とする流れはありませんでしたが、道元禅師がきっかけとなり、仏門のなかで広まったとされています。

「たとえ病で命を失うことになっても口にしてはならぬ」と書物に記されていたほど、当時は厳しく制限していたといわれており、これが東南アジア仏教の基本的なスタンスになったといわれています。このように、アジア諸国でオリエンタルヴィーガンが多いのは、宗教上の理由が混在しているのかもしれません。


五葷を避ける理由には仏教が関係している

上述したように五葷を口にしないのは、仏教が関係しているといわれています。仏教において五葷を避ける理由について紹介します。

五葷を食べると修行の妨げになるから

五葷には、にんにくのように滋養強壮に良いといわれる野菜が含まれています。スタミナをつけるためににんにくを食べる方もいるように、昔からにんにくは元気をもたらす野菜として重宝されていました。油を使ってにんにくを加熱調理すると、おいしそうな香りが食欲をそそるため、修行に身が入らなくなってしまった僧侶もいたのではないでしょうか?

また、にんにくは気血の巡りを良くして血行を良くする働きがあることから、生薬としても使われてきました。しかし、食事として摂った場合、食欲が増してしまい修行の妨げになることから、食べるのではなく薬としての位置づけになったとされています。

五葷の刺激臭が煩悩を呼び起こすから

五葷にはねぎやにんにく、ニラ、らっきょうなど、いずれも臭いの強い野菜ばかり含まれています。これらの野菜は香りや味にインパクトがあるため、修行僧の集中力を欠く要因になると考えられていました。「食べたい」という欲望から心の乱れにつながり、修行が思うように進まなくなることを危惧して避けられていたともいえます。とはいえ見解はさまざまであり、あるお寺ではにんにくの香りだけは使って良いとされるところもあるようです。香りだけ活用するときは、鍋でにんにくを炒めた後に、にんにくだけを取り出して捨てているそうです。


五葷抜きの料理には精進料理がおすすめ!おいしく作るためのヒント

五葷を使用しない料理を作るときは、精進料理を参考にするのがおすすめです。ここでは、限られた食材でおいしく作るためのコツを紹介します。

だしを活用する

五葷抜きに仕上げるためには、カツオ節やブイヨンなどの動物性食品は避けなければなりません。とはいえ、旨みがなければおいしさは半減してしまうため、しいたけや昆布などを活用するのがおすすめです。

また、だしとして使用するときは干し椎茸を使うのがポイントです。しいたけを干すことで水分が減り、旨みが濃縮するとともに旨み成分であるグアニル酸が作られるからです。生しいたけにも旨み成分のグルタミン酸が多く含まれていますが、グアニル酸は干し椎茸にしか含まれていません。一方、昆布には旨み成分のグルタミン酸が含まれています。このように、だしのおいしさを活かすには、食材の特徴を知り料理に活かすことが大切です。

素材の味を楽しむ

素材が良ければ少ない調味料でもおいしく仕上がります。太陽の恵みをたっぷり浴びた食材は味が濃く、おいしさも格別で栄養満点です。五葷抜きの食事を作るときは、素材の味を楽しむつもりで食材と向き合ってみてはいかがでしょうか?普段テレビを見ながら食事をしている方は、食事に集中して食感や味など丁寧に食事を味わってみると、いつもと違う発見があるかもしれません。


五葷食材を食べるメリット

五葷は滋養強壮に良い食材です。ほかにも、五葷にはどのようなメリットがあるのでしょうか?

料理のアクセントになる

五葷に含まれるにんにくやねぎなどは料理のアクセントになるため、飽きずに楽しむことができます。ほんの少し加えるだけで味が引き締まったり、食欲をそそる料理に変身したりします。また、ねぎを料理のトッピングにすると見た目も華やかになるでしょう。スープやソース、ドレッシングに加えてもおいしく調理できます。

腸活におすすめ

五葷のひとつである玉ねぎには、食物繊維のほかに善玉菌のエサになるオリゴ糖が豊富に含まれています。生のままで食べるのが苦手な方は、加熱してカサを減らすと食べやすくなるので、ぜひ試してみてください。玉ねぎは甘みや旨みがあるので、さまざまな料理に活用できるのもメリットといえるでしょう。

また、水溶性食物繊維が豊富ならっきょうも、腸内で善玉菌のエサとなるため、腸活におすすめです。ただし、水溶性食物繊維は水に溶けやすい性質があるため、らっきょうの漬け汁は捨てずに酢の物にしたり、南蛮漬けに使用したりするなど、工夫すると良いでしょう。

スタミナを維持できる

にんにくやニラ、らっきょうには、ビタミンB1の代謝をサポートするアリシンが豊富に含まれています。ビタミンB1が不足すると疲れやすくなったり、だるくなったりする可能性があります。ビタミンB1は植物性食品のなかでは、大豆や玄米などに多く含まれているので、にんにくやニラなど、アリシンを含む食材と一緒に食べるのがおすすめです。スタミナ不足が気になるときは、これらの栄養素を意識的に取り入れ、効率良く栄養を補いましょう。


五葷を食べ過ぎるとどうなる?対処法も紹介

五葷は刺激が強い野菜なので、食べ過ぎると胃腸に負担がかかってしまいます。特ににんにくやニラなどは、生で食べると刺激が強く消化にも悪影響を与えるおそれがあります。また、にんにくやニラに含まれる硫化アリルは、摂り過ぎると口臭や体臭の原因になりかねません。身体に良いからといって食べ過ぎないようにしましょう。

食べ過ぎてしまったときは、うどんや柔らかく煮た野菜など消化の良い食事を意識して摂ることをおすすめします。また、消化に良い食材を取り入れるのもひとつの方法です。胃の粘膜を保護する働きがあるカロテンが豊富なにんじんや、消化酵素を含む山芋などを活用しましょう。

ほかにも、ポリフェノールにはにんにくやニラに含まれるアリシンを分解する働きがあるとされています。臭いが気になるときはポリフェノールを含む緑茶を飲んだり、りんごを食べたりするなど工夫すると良いでしょう。


まとめ

五葷とは臭いや刺激の強い野菜のことであり、具体的にはねぎや玉ねぎ、にんにく、ニラ、らっきょうなどを指します。宗教上の理由や体調を考えてオリエンタルヴィーガンを選択する方もいますが、五葷には健康に良いとされる栄養素が豊富に含まれています。食べるかどうかの判断は個人に委ねられる部分でもありますが、ゆるベジタリアンといわれるフレキシタリアンという選択肢もあるため、柔軟に食生活を考えてみるのもおすすめです。食材の選択肢も広がるため、気になる方はぜひ参考にしてみてくださいね。