マクロビオティックとプラントベース【陰陽食材と組み合わせの具体例】管理栄養士が紹介

マクロビオティックとプラントベースの違い|陰陽の食材と組み合わせの具体例を紹介

近年、食に対する意識の高まりからマクロビオティックやプラントベースの食事法が注目を集めています。これらの食事法は、健康や美容に良いだけでなく、私たちの食生活やライフスタイルを見直すきっかけになるかもしれません。とはいえ、どのような食材や調理法を心がければよいのかお悩みの方もいるでしょう。そこで今回は、マクロビオティックとプラントベースの食生活を意識した食材の選び方や調理法について解説します。

マクロビオティックとプラントベースの違い

マクロビオティックとは、未精製の穀物や野菜、海藻などの自然に即したシンプルな食生活を心がけ、健康と心の安定を目指す食事法のことです。日本の伝統食をベースとし、陰陽の考え方を用いた食材の選び方を実践し、肉などの動物性食品や加工食品などは控えます。

マクロビオティックは海外から取り入れられた食事法だと思われがちですが、実は哲学者・思想家・平和運動家である桜沢如一氏によって提唱され、日本に逆輸入される形で広まりました。

一方、プラントベースは、動物性食品を極力避け、植物性食品を中心とした食事法です。自然の恵みを大切にすることや体の内側から健康を意識する点は共通していますが、陰陽の思想が根底にある点でマクロビオティックと異なります。とはいえ、ふたつの食事法を意識すると、カロリーや脂質を抑えつつ、たんぱく質を補えるため健康的な生活に近づけるでしょう。


マクロビオティックの押さえておきたい3つの考え方

マクロビオティックでは、下記の3つの考え方があります。

  • 身土不二(しんどふじ):住んでいる土地の旬のものを食べること
  • 一物全体(いちぶつぜんたい):なるべく精製されていない自然の恵みを丸ごといただくこと
  • 陰陽論(いんようろん):陰と陽の調和がとれた状態(中庸)を目指す考え方のこと

それぞれ詳しくみていきましょう。

身土不二(しんどふじ)

身土不二とは、人間や植物、生まれた環境すべてが密接に関係していることから、住んでいる地域で収穫される食材を食べることが大切という意味です。例えば、暖かい地域で収穫される果物には体内の熱を下げる働きがあります。一方で、寒い地域で収穫される野菜には身体を温める働きがあるのです。四季を通じてその時期にしか食べられない食材をとることで、身体のバランスがとれると考えられています。

一物全体(いちぶつぜんたい)

一物全体とは、ひとつのものを丸ごと全部食べるという意味です。食材はそのままでバランスがとれており、すべて身体にとって重要な栄養源になります。例えば、玄米には精白米にはないぬかや胚芽の栄養が含まれています。ビタミンB群やカルシウム、マグネシウム、食物繊維などが豊富です。骨ごと食べられる小魚を丸ごと食べれば、カルシウム補給になります。また、野菜であれば皮や葉にも栄養があり、このように食材の食べ方によって身体のバランスがとれるといわれています。ただし、皮や葉なども食べるため、農薬や栽培方法にも配慮し安心できるものを選びましょう。

陰陽論(いんようろん)

マクロビオティックでは、すべての食材に陰陽があると考えられています。陰性は「遠心力、静、冷、水分過多のもの」に対し、陽性は「求心力、動、熱、水分過小」を示します。陰陽論では、これらのバランスを取ることで、身体の調和が保たれるとされています。


【マクロビオティック】陰陽の食材

上述したように、マクロビオティックではすべての食材には陰陽があるという考え方があり、バランスがとれた状態(中庸)を理想としています。例えば、塩気の強いものを食べたあとに甘いものが食べたくなったり、こたつにあたりながらアイスクリームを食べたくなったりするのも、身体が無意識にバランスを取ろうとしているからです。しかし、極端に偏った陰陽の食材を交互に食べていると、身体にとっては大きな負担になります。どちらか一方に偏りすぎず、なるべく振れ幅が少なくなるよう調節することがポイントです。ここでは、陰陽の概要と具体的な食材について解説します。

陰性の食材

陰性の食材は、上に向かって成長する食材が多く、身体を冷やす作用があります。主に冷たいものや水分が多いものなどが含まれます。具体的な食材は下記の通りです。

  • トマト、なす、生椎茸、じゃがいも、バナナ、ぶどう、ナシ、大豆、豆乳、豆腐、きな粉、さつまいも、里芋、長芋、にんにく、たけのこ、ナッツ類、オリーブオイル、生姜、はちみつなど

陽性の食材

陽性の食材は、地中に向かって成長する食材が多く、身体を温める作用があります。主に熱いものや水分が少ないものなどが含まれます。具体的な食材は下記の通りです。

  • 人参、ごぼう、ふき、梅干し、自然薯、鮭、鯛、イワシ、味噌、醤油、自然塩、豚肉、牛肉など

陰陽の食材の組み合わせのヒント

陰陽の考え方では、どちらか一方の性質に偏らずに食事を組み合わせることが大切とされています。基本的に玄米ご飯、季節の野菜や海藻を使った煮物や味噌汁などを中心に、献立を立てましょう。

とはいえ、陽性の強い肉が食べたくなることもありますよね。マクロビオティックを始めたばかりで極端に肉を控えると、かえってストレスになりかねません。動物性食品である肉だけでは、陰陽が偏ってしまうため食材を組み合わせて中和させることが大切です。

例えば、大根は中庸に分類されますが、葉の部分は陰性であり根の部分は陽性です。この性質を活かして、大根おろしたっぷりの和風ハンバーグにすれば、大根に含まれる酵素によって消化をサポートしてくれます。また、すりおろすことで大根の細胞が壊れるため、消化酵素も働きやすくなります。ほかにも、焼き魚や天ぷらの付け合わせにしたり、大根おろしと一緒に煮込んだみぞれ煮にしたりするなど、活用してみてください。

また、牛肉(陽性)とピーマン(陰性)を合わせて炒めものにするのもおすすめです。パプリカやきのこを加えれば、彩りも豊かになり食欲のわく一品になります。バランスを取るために陽性の鮭と陰性の豆乳を合わせて、鮭の豆乳グラタンにするのもひとつの方法です。バターや牛乳を使わなくてもおいしく作れます。

陰陽食材をバランス良く使用したおすすめレシピが知りたい方は下記をご覧ください。
クックパッド


調理法によっても異なる陰陽の考え方

食材だけでなく、調理法にも陰陽の考え方があります。火を使わずに生のまま食べるサラダは陰性の調理法です。反対に、煮込み料理のような温かいものは陽性の調理法と考えられています。そのほか、調理法による違いは下記の通りです。

【陰性の調理法】

  • 火をあまり使わない
  • 短時間で調理する
  • 圧力はかけない
  • 油や水が多い
  • 陰性の調味料(酢、甘味料、ハーブなど)を良く使う
  • 土鍋や木製の調理器具を使う
  • 調理する際、野菜は小さめに切る

【陽性の調理法】

  • 火を使った調理法が多い
  • じっくり調理する
  • 圧力をかける
  • 油や水はあまり使わない
  • 陽性の調味料(塩、醤油、味噌など)を多く使う
  • 鉄鍋や金属製の調理器具を使う
  • 調理する際、野菜は大きめに切る

食事と合わせて意識すると良いこと

早食い傾向がある方は、ゆっくり良く噛んで食べることを心がけましょう。良く噛んで食べることで、消化吸収が促され、胃腸への負担軽減につながるからです。唾液の分泌も活発になり、虫歯予防に役立ちます。また、満腹感を得やすく食べ過ぎを防ぎやすくなります。

食べ方以外にも、腹八分目を意識して適量食べることも大切です。加えて、ストレスを溜めないように、音楽鑑賞や読書など自分なりの気分転換法を見つけておくと良いでしょう。十分な睡眠と適度な運動も、生活習慣を整える上で重要なポイントです。


まとめ

マクロビオティックとは、日本の伝統食をベースとし、陰陽の考え方を用いた食事法のことです。プラントベースと共通している部分もありますが、食事に対する思想が異なります。また、マクロビオティックでは身土不二、一物全体、陰陽論の考え方に基づき、食生活を整えるのが基本です。陰陽食品や調理法を考えて、バランス良く取り入れながら、健康的な生活を目指しましょう。