COLUMN

2022.02.11

COLUMNベジタリアンについて/ライフスタイル

完全菜食主義者に潜む、意外な健康リスク

完全菜食主義（ベジタリアン）を実践するメリットについては、これまでも数多くの文献で語られてきましたが、意外な健康リスクがあることを知っている人は少ないかもしれません。

今回は海外メディアが取り上げた、完全菜食主義者の健康リスクについて紹介します。

ベジタリアンは肉食の人よりも○○のリスクが高い

オックスフォード大学の栄養疫学者であるタミー・トン氏によると「ベジタリアンやビーガンの人たちは、通常の食生活（肉食）を送る人たちよりも脳卒中のリスクが高い可能性がある」と述べています。特に、脳卒中は20％も発症リスクが上がるそうです。ちなみに、日本での死亡原因ランキングでは脳卒中が4位に入っています。

参考：大塚製薬 “脳卒中ってどんな病気？”

原因は何？

成人病リスクの指標ともいわれているコレステロール値ですが、ベジタリアンの人たちはこのコレステロール値が一般的に低い傾向にあります。これは一見して良いとも思われますが、先のトン氏によると「コレステロール値が非常に低いと、出血性脳卒中のリスクがわずかに高くなる」とも述べています。

さらに、ベジタリアンの人たちが足りなくなりやすい栄養素であるビタミンB12も原因では、という指摘もしています。

その指摘を示す根拠は、トン氏の研究チームが行った、大規模な追跡調査の結果により分かりました。

▼英国に住む平均年齢45歳の48,000人以上を対象

▼内訳は肉食をする人（約半数の24,428人）、魚を食べるペスカトリアン（7,506人）、ベジタリアン（ビーガンを含む）（16,254人）

▼平均18年間追跡

参考：theBMJ “Risks of ischaemic heart disease and stroke in meat eaters, fish eaters, and vegetarians over 18 years of follow-up: results from the prospective EPIC-Oxford study”

「この追跡調査から、ベジタリアンの人たちよりもペスカトリアンの人たちの脳卒中リスクは低かった。これは、魚や他の動物性食品からB12を摂取することができたからである。」とトン氏は述べています。

一方で健康的メリットも

ベジタリアンの人たちの意外な健康リスクを挙げましたが、ある疾患リスクが低いことも先の調査により分かりました。それが、ベジタリアン（ビーガンを含む）は、肉食をする人に比べて心臓病（冠動脈疾患）のリスクが22%低いという結果です。また、ペスカトリアンは肉食の人に比べて心臓病のリスクが13％低いという結果もありました。つまり、脳卒中の発症リスクが高いとされたベジタリアンが、心臓病に関しては一番低リスクだったのです。

ケンブリッジ大学のMRC生物統計学ユニット所属のグループリーダーであるステファン・バージェス氏は「ベジタリアンは脳卒中リスクが高いにもかかわらず、心臓血管の健康は優れていたと言えるでしょう。」と語っています。

さらなる研究が期待される

しかし、この研究結果に対して懐疑的な声もいくつかあります。ロンドン大学の心臓専門医マルコム・フィンレイ博士は「この研究は”ベジタリアンが肉食者よりも非常に健康である“という（普遍的な）考え方を補正しようと、複雑な統計的手法に重きを置き過ぎている。」と述べています。さらに、オーストラリアのディーキン大学のマーク・ローレンス教授とサラ・マクノートン教授は、「高所得である英国在住のベジタリアンの生活習慣や食事パターンが、世界中のすべてのベジタリアンには当てはまらないだろう。」と指摘しています。

参考：theBMJ “Vegetarian diets and health”