3月20日は、動物の愛護と適正な飼育についての関心を深める日「動物愛護デー」です。
動物愛護デーをきっかけに、普段私たちが口にする動物性の食べ物がどのように作られて地球環境にどのような影響を与えるのか考えてみませんか?
今回は、工業型の畜産が引き起こす問題について詳しく紹介します。
動物愛護デーの由来
3月20日が「動物愛護デー」になったのは1949年です。GHQ(連合国最高司令部)の指示により、春分の日に制定されました。
1951年からはこの動物愛護デーを含む1週間を動物愛護週間とし、動物の愛護や適正な飼育についての知識や理解を深める目的でさまざまなイベントが開かれています。動物好きの芸能人や著名人が参加するイベントなども開催されているようです。
また動物愛護週間の期間中は、犬や猫の殺処分ゼロに向けた取り組みや補助犬や介護犬育成のための寄付なども行われています。
動物愛護デーは、それぞれの動物習性を理解し、愛情を持って人と動物が共存できるよう管理することの大切さを改めて思い出させてくれる日です。
肉食が地球環境に及ぼす影響とは
動物はペットとして飼うものだけではなく、私たち人間が食用として食べる牛や豚、鶏などもいます。
普段当たり前のようにスーパーで購入したり飲食店で食べたりしている食肉。しかし、食用動物の飼育によって、地球環境にさまざまな大きな負担がかかっていることをご存知でしょうか。
食肉を手にするまでにどのような悪影響が起きるのか1つずつ詳しく見ていきましょう。
地球温暖化
地球温暖化とは、大気中に含まれる二酸化炭素などの温室効果ガスが放出されることで、地球全体の平均気温が上昇する現象のことをいいます。2015年に採択されたパリ協定では、2050年までに地球の気温上昇を、産業革命以前と比べて1.5度以内に抑えることを目標としています。
工業で排出される温室効果ガスを減らす取り組みは、大企業を中心にすでに始まっています。一方畜産で排出される温室効果ガスの量も深刻で、世界の約14%の温室効果ガスが畜産によるものとされています。これはなんと、飛行機・船・車やバスなどすべての乗り物から排出される温室効果ガスと同じ量です。
さらに温室効果ガスの1/3は、現在の食料システムに関係しているという論文もあります。もし現在の食料システムが排出する温室効果ガスをそのまま放置しておくと、それだけで2050年までに気温の上昇が1.5度を超えてしまうとされています。
森林伐採
1990年から2010年の間に、世界の熱帯雨林が62%も消滅しました。さらに2014年8月以降、ブラジルでの森林伐採が、前年比で2倍以上に急増しています。森林伐採の主な目的は、牛の放牧地への変更です。南米の熱帯雨林の40%に当たる1750万ヘクタールは、40年間で食用の牛肉生産のために失われたのです。
森林は二酸化炭素を吸収する働きがあり、地球温暖化に歯止めをかけるためにも重要な役割を果たします。森林伐採は地球温暖化へとつながり、さらに気流や雨量などの気候変動を引き起こすでしょう。
もし普段の食生活から牛肉の消費を20%減らせれば、2050年までの森林破壊率は、現在のペースで肉食を続けた場合の半分になります。
大量の穀物・水の消費
畜産業では大量の穀物を消費します。とうもろこしを飼料にする場合で考えると、必要なとうもろこしの量は牛肉1kgあたり11kg、豚肉は6kg、鶏肉なら4kgです。穀物を作るための広大な農地を確保することは、森林破壊の原因にもなります。
また、飼料生産から食肉処理を行う過程で、大量の水を消費していることにも注目しましょう。牛肉1kgを生産するためには、1万5,415リットルの水が必要です。
大気・水質汚染
食肉を生産するための食料生産は、PM2.5を排出し大気を汚染します。大気汚染というと自動車や工場の排出ガスのイメージがありますが、実は人間の体に深刻な影響を与える大気汚染の約80%が、食肉や卵、乳製品の生産に関連したものだそう。
また食用に飼育される動物は、人間よりも大量の排泄物を排出します。今までアメリカでは、毎年約5億トンの食肉用動物の糞尿を、ラグーンと呼ばれるため池に保管したり畑に噴霧したりして処理していたそうです。しかし、昨今の世界の国々の温室効果ガス排出抑制の流れに合わせて、アメリカは牛の糞尿から再生可能エネルギーを生産する技術が開発されるなど新たな取り組みが始まっています。
食肉用の動物を屋内で飼育するにあたっては、大量の抗生物質やホルモン剤などが投与されており、動物の糞尿に混ざって川や海を汚染します。また家畜の餌となる作物にも多くの農薬や化学肥料、除草剤などが使われており、川などに流れ込むことで水質汚染を引き起こすとされています。
野生動物の減少
1970年~2016年の間に、野生動物の個体数が68%も減少しました。これは過去数百万年の間で見てもないスピードです。
この野生動物の減少にも、食肉が関係しているといわれています。野生の哺乳類動物は陸上で4%なのに対し、私たちが飼育している家畜動物は60%にのぼります。畜産によって地球上の生態系にも大きな影響が出ていることがわかります。
プラントベースの食生活が地球を救う
いつも気軽に食べているお肉が、実は地球環境に大きな悪影響を及ぼしていることをおわかりいただけたのではないでしょうか。
食べるものが自分たちの体にどのような影響を及ぼすのかを気にする人は多いですが、食べるものが作られる過程で環境やほかの動物、人体にどのような影響を与えるのかを考えることはあまりないかもしれません。
一人ひとりが食生活を少し変えることが地球を守り、未来の人類やほかの生物が生きやすい環境につながることを意識して、食べるものを選ぶようになるといいですね。
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