近年、健康志向の高まりとともに、グルテンフリーが注目を集めています。健康維持や美容のためにグルテンフリー食品を選ぶ方も、増加傾向にあります。
とはいえ、グルテンフリーが一体何を意味するのか、どのようなメリットやデメリットがあるのか、気になる方も多いのではないでしょうか。
そこで今回は、管理栄養士の下田さんにグルテンフリー食品を選ぶ際に知っておきたいメリットとデメリットについて解説していただきます。
管理栄養士の下田さんについては下記のプロフィールをご覧ください。
そもそもグルテンフリーとは?
グルテンとは、小麦や大麦、ライ麦などの穀物に含まれるタンパク質の一種です。食品に粘弾性をもたせる性質があり、パンやピザなど、多くの料理に使用されています。
グルテンフリーとは、グルテンを一定量以上含まない食品や、グルテンを含む食品を食べないライフスタイルのことです。
グルテンを避けることで身体の調子を保つことを目的とし、主に米国において、セリアック病の方のために生まれた食事法といわれています。
グルテンフリーは誰でも有効なのか?
セリアック病は、日本ではそれほど多くない疾患です。一部の方から、「日本人にグルテンフリーは合わないのでは?」という意見が聞かれることも少なくありません。
しかし、世界中にはグルテンが体質に合わない方もいるため、そのような方がグルテンフリーを実践すると変化がみられる可能性があります。
小麦アレルギーがある方やグルテンを摂ると調子が優れない方などは、試す価値は十分にあります。
出典:「バイオテクノロジー応用食品のアレルギー誘発性に関する FAO/WHO専門家会議報告書」(国連食糧農業機関)
グルテンフリーのメリット
グルテンフリーが注目される背景には、さまざまなメリットが考えられます。ここでは、グルテンフリーのメリットについて解説します。
QOLの向上につながりやすい
小麦アレルギーやセリアック病、グルテン過敏症などの疾患をもつ方にとって、食事選びは重要です。
グルテンは、これらの疾患の主な原因となるタンパク質であることから、食事を調整することで生活の質の向上につながることが期待できます。
毎日の健康をサポートできる
健康的な生活を送る上で欠かせないのが腸内環境です。グルテンは体内で消化されにくい性質があり、体質によっては便秘の原因になりかねません。
特に、グルテンに過敏に反応してしまう「グルテン過敏症」や、グルテンの消化が困難な「グルテン不耐症」の方は、グルテンフリーにすることで、朝からスッキリと過ごせるようになる可能性があります。
自分の肌に自信がもてるようになる
グルテンが体質に合わない方の場合、摂取状況によっては肌荒れなどの肌トラブルを引き起こすおそれがあります。
小麦はさまざまな食品に含まれているため、気づかぬうちに食べてしまっている可能性があるかもしれません。このような場合、グルテンフリーを取り入れることで、体質に合った食生活へ近づけることができます。
ただし、肌への影響に関しては、個人差がみられることがあります。
ダイエット目的の方に向いている
小麦製品に多く含まれているグルテンは、ダイエットの大敵になる食品にも使われていることがあります。
例えば、ピザやパスタ、ケーキなど、油や砂糖がたっぷり使用されているものは、ダイエット中は極力控えたい方もいるでしょう。
日頃からこれらの料理を食べる頻度が多い方にとって、グルテンフリーにすることで自然とカロリーや脂質の摂取が抑えられます。
とはいえ、グルテンフリーによって減量が成功するとは限りません。グルテンを控えることに加えて、栄養バランスの良い食事や定期的な運動を心がけることも大切です。
グルテンフリーのデメリット
グルテンフリーを食生活に取り入れる前に、デメリットについても把握しておきましょう。ここでは、グルテンフリーの注意点と取り入れる際のポイントについて紹介します。
栄養バランスの偏り
グルテンフリーを続けていると、小麦に含まれるビタミン・ミネラル、食物繊維が不足しやすくなる可能性があります。
栄養が偏ると身体のさまざまな場所に支障をきたすリスクが高まってしまいます。
そのため、栄養バランスを考えた献立にしたり、代替食品を活用したりするなどで、不足しがちな栄養素を補いましょう。
食事の選択肢の減少
食べることは楽しみのひとつでもありますが、グルテンフリーを行うと、以前よりも自由に選べる食品が限られてしまうことがあります。
特に、グルテンはさまざまな食品に含まれているため、必然的に選択肢が狭まってしまうのです。
外食や旅行での食事に制限があると、食べられないことへのストレスが増してしまう場合があるため注意が必要です。
とはいえ、代替できる食品もあるため、事前にレストランをチェックしたり、一緒に食事をする方に事情を伝えたりするなど、対応することで無理なくグルテンフリーが続けられるでしょう。
経済的な負担
グルテンフリーの食品は増えてきているものの、一般的にスーパーで販売されている食材に比べると数は限られています。
グルテンフリーの食品を見つけても、一般的なものよりも高価格な場合が多いでしょう。
そのため、グルテンフリーを続けることが経済的負担になってしまう方がいます。
食費がかかりすぎてしまう方は、主食をご飯に置き換えたり、おやつをフルーツやヨーグルトなどにしたりするなど、工夫してみるのもおすすめです。
高価格の製品が多いグルテンフリー食品ですが、お客様に良い製品を届けたいという企業のこだわりから、値段が高くなってしまうことがあります。
とはいえ、消費者のニーズが高まれば、商品の価格を抑えることにもつながるかもしれません。
応援の意味を込めて、無理のない範囲で取り入れてみるのもひとつの方法です。
まとめ
グルテンフリーとは、グルテンを使用していない製品や、グルテンを含む製品を食べないようにするライフスタイルのことです。
グルテンが体質に合わない方がグルテンフリーを実践すると、良い影響をおよぼす可能性があります。
とはいえ、グルテンフリーは万能ではありません。過度な期待はせず、健康的な生活を送るためのひとつの手段と考えることが大切です。
また、健康状態に不安があるときの自己判断は危険ですので、気になる場合は医師に相談しながら始めましょう。
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【参考記事】
出典:「I.セリアック病」(日本大腸肛門病学会雑誌)
出典:「バイオテクノロジー応用食品のアレルギー誘発性に関するFAO/WHO専門家会議報告書」(国連食糧農業機関)
出典:「【医師監修】パンやパスタなどの小麦食品を食べると便秘になりやすいってホント?」(健栄製薬)