気候変動と飢餓には密接な関係があるといわれています。
特に、地球温暖化による豪雨災害や洪水などの増加は、飢餓のリスクを高める要因になりかねません。
災害が起こると、作物の栽培が難しくなる場合があり、栄養価が低下する可能性や価格高騰も考えられます。
そこで今回は、管理栄養士の下田さんに気候変動による食物への影響や、地球温暖化を防ぐための食生活のポイントを解説いただきます。
下田さんについては下記のプロフィールをご覧ください。
世界の飢餓人口は増え続けている
unisefの資料によると、2019年の飢餓人口は約6億9,000万人にのぼるとされており、2018年から1,000万人、5年間で6,000人近く増加したと推定しています。
国別に見た栄養不良の割合はアフリカで19.1%、アジアで8.3%、中南米おおよびカリブ海諸国は7.4%です。
このままの状態が続けば、2030年までにアフリカの飢餓人口が全体の半分以上にのぼる可能性も考えられます。
気候変動による食料の価格高騰などが進むと、飢餓人口は今後さらに増加し続けていくでしょう。
出典:「THE STATE OF FOOD SECURITYAND NUTRITIONIN THE WORLD」(unisef)
https://www.unicef.or.jp/jcu-cms/media-contents/2020/07/English___SOFI_2020_-_In_Brief.pdf
気候変動が食物に与える影響
気候変動は飢餓や栄養不良を引き起こす原因になりかねません。
どのような影響があるか詳しく確認していきましょう。
農作物などの収穫量の減少
気候変動で自然災害が増えると、農作物が育ちにくくなり収穫量が減少する恐れがあります。
暖かくなると収穫量が増加する地域や作物もありますが、気温上昇の幅が大きいと農作物の収穫量は減少してしまいます。
作物が育つ適温から逸脱した環境下では、花粉の発達障害や受精障害などを生じ、生産性の減少につながるでしょう。
また地球温暖化により海面上昇が起こると、海の生態系にも悪影響を及ぼす可能性があります。
その結果、漁獲量の減少につながり、食糧不足が懸念されます。
農作物の栄養価の低下
ハーバード公衆衛生大学院の研究によると、小麦、トウモロコシ、米、大豆などの食用作物が、2050年に予測されるレベルのCO2にさらされると、これらの栄養価が低下すると示唆しました。
植物は最大10%のエネルギーを消失するといわれています。
亜鉛や鉄の5%、タンパク質の8%も含まれています。
同じ食べ物でも栄養価が違えば、体内に吸収される量も変化するでしょう。
身体に必要な栄養素が補給できなくなると、健康リスクも高まります。
ただし、すべての作物の栄養価が低下するわけではありません。
なかには栄養価が低下しなかったものもあるようです。
とはいえ、CO2の排出量が増えることで農作物の栄養価が下がると、栄養不足を引き起こしやすくなるため注意しなければなりません。
気候変動による温暖化が進むと、食べ物の栄養価の低下による隠れた飢餓が増える可能性があります。
出典:「Climate Change & Nutrition」(ハーバード公衆衛生大学院)
食料の価格高騰
気候変動などの影響により農作物の収穫量が減少すると、食糧の供給が減り価格高騰を招きやすくなります。
農作物の収穫量が減れば、出荷している農家の収入も減少するかもしれません。
食糧の価格高騰により負のスパイラルに入ると、隠れた飢餓が増える可能性があります。
自然を相手にしている農業は、気候変動や自然災害の影響を受けやすく、価格高騰を招きやすくなります。
気候変動の影響を受ける植物の具体例
地球温暖化により気温が上昇すると、品質悪化を招きやすくなります。
作物は温暖化によりどのような影響を受けるのでしょうか?
ここからは、気候変動の影響を受ける植物の具体例をご紹介します。
米と地球温暖化
高温の日がイネの穂が出るまでの間に連続して重なると、米が白くにごったりひびが入ったりする場合があり、見た目や食味が悪くなります。
とはいえ、現在は高温でも米が白くなりにくい以下のような品種も開発されているようです。
・農研機構:にこまる
・新潟県:こしいぶき
・富山県:てんたかく
・熊本県:くまさんの力
・千葉県:ふさおとめ など
みかんと地球温暖化
暖かい地域で栽培されるイメージのあるみかんですが高温が続いたり、大量の雨が降ったりするとみかんの中身と皮が分離して、味が悪く腐りやすくなります。
さらに、強い日差しを浴びると皮が茶色に変色することがあり、販売できなくなってしまいます。
牛と地球温暖化
地球温暖化で暑すぎる日が続くと、人間と同じように牛も夏バテすることがあります。
食欲低下がみられ、牛乳や食肉の生産量が減ってしまいます。
牛が過ごしやすいように風を送ったり、換気をしたり餌を与える時間を調整するなど、対策しているところもあるようです。
隠れた飢餓を防ぐために食生活を見直そう!
食糧の需要と供給のバランスが崩れると、私たちの健康にも影響を及ぼす可能性があります。
食糧があっても地球温暖化により、栄養価が低い作物が増えると必要な栄養を補うことが難しくなってしまいます。
そのため、普段の食生活を見直すことが大切です。
最後に、隠れた飢餓を防ぐためのポイントを3つご紹介します。
食品ロスをなくす
食品ロスにより廃棄された食べ物のほとんどは可燃ゴミとして処理されます。
処理工程で大量の二酸化炭素が排出され、地球温暖化の原因につながります。温暖化が進むと災害が増えて、作物の成長に悪影響を及ぼしかねません。
食べる量だけ購入する、作り置きを活用するなど、食べ物を無駄にしないよう心がけましょう。
地産地消を心がける
居住地域で生産された食材を購入する「地産地消」は、地球温暖化対策になります。
生産者と消費者の距離が物理的に近ければ、運搬にかかる費用が削減できるでしょう。
離れた地域に届けるには、人手が必要となり運搬費用が嵩むからです。
経費削減だけでなく、地産地消を心がけることで、運送の際に排出される二酸化炭素も減らせます。
食材を購入する際は、積極的に地元で生産されているものを選んで環境負荷を軽減しましょう。
ミートレスな食生活を意識する
地球温暖化を防ぐために、代替肉を使ったミートレスな食生活を心がけるのもひとつの方法です。
英国リーズ大学の研究者の報告によると、地球温暖化を招く温室効果ガスの排出量は食品のなかで肉類が一番多いことがわかります。
肉類の場合は最大で32%、飲料が15%、乳製品が14%、ケーキや菓子などが8%と続きます。
また、菜食主義者(ベジタリアン)に比べていつも通りの食事をする非菜食主義者の方が、59%温室効果ガスの排出量が多かったそうです。
大きな違いは肉類を摂取しているかどうかです。この結果から、ベジタリアンの方が地球に優しい食生活だといえるでしょう。
とはいえ、今まで肉類を食べてきた方にとって急にベジタリアンの食生活にするのは、難しい方もいるのではないでしょうか?
そんな方におすすめなのがフレキシタリアンのスタイルです。
フレキシタリアンは厳しい食事制限をするのではなく、植物性食品を基本にして適度に肉や魚も食べるスタイルです。
豆腐や豆だけでなく、大豆ミートを活用すればさまざまな料理に応用できるでしょう。
ゆるく始められるので少しずつ食生活をシフトしていきたい方は、ぜひ検討してみてください。
まとめ
気候変動による洪水などの自然災害が増えると、隠れた飢餓を引き起こしやすくなるため注意が必要です。
地球温暖化により農作物などの収穫量が減ると、需要と供給のバランスが崩れやすくなります。
食糧の価格高騰につながり、経済的な負担も増えます。
また、適した環境で栽培できなかった農作物は、栄養価も低下しがちです。
地球温暖化対策を行い隠れた飢餓を防ぐために食品ロスをなくしたり、地産地消を心がけたり、ミートレスな食生活を意識してみませんか?
【参考記事】
https://www.unicef.or.jp/news/2020/0173.html
https://ja.wfp.org/news/qihoubiandongjiewoehuasaseruyanshiixianshi
https://www.cger.nies.go.jp/ja/library/qa/12/12-2/qa_12-2-j.html
https://www.afpbb.com/articles/-/3175827?page=2
https://www.naro.affrc.go.jp/org/niaes/ccaff/contents/q_and_a.html
https://sndj-web.jp/news/001623.php
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私たち、エシカルフード株式会社は「食生活が、地球環境を守る」をテーマに、肉食を控える食生活~Meatless Diet(ミートレスダイエット)~という、新しいライフスタイル・価値観を提唱するために、2021年6月に発足しました。
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