日本人は昔から豆腐や納豆、海藻などの植物性食品を食事のなかに多く取り入れてきました。一見、ヴィーガンに馴染み深い食文化のように思えますが、実際のところヴィーガン人口は決して多くありません。
では、なぜ日本でヴィーガンが広まりにくいのでしょうか?今回は、日本と海外の食文化や価値観の違いに焦点をあてながら、日本人がヴィーガンを選択しづらい背景を管理栄養士の下田さんに考察・解説していただきます。
管理栄養士の下田さんについては下記のプロフィールをご覧ください。
日本人のヴィーガンは少数派
プラントベースの情報サイトVegewelの「第4回日本のベジタリアン・ヴィーガン・フレキシタリアン人口調査」にて、20代以上の男女約2400人を対象に調査が実施されました。
そのうち、ベジタリアンは全体の4.5%、ヴィーガンは全体の6.9%と報告されています。両方の結果を合わせて、重複した回答1.0%を考慮すると、5.9%の方がベジタリアンやヴィーガンを意識した食生活をしていることがわかります。
日本人の100人に対して約6人の割合と聞くと、ベジタリアンやヴィーガンになるハードルが高いのかもしれません。
また、肉や魚など、動物性食品を減らすことはあるかどうか調査すると、26.1%と約4人に1人の方は、意識して食べないと回答しています。
頻度に関しては、毎日摂らない方が18.2%、3日に1日程度に減らす方が25.9%であり、44.1%の方があえて食事内容を変えていることがわかりました。
一方、週に1日程度と回答した方は32.1%、月に1日が11.6%となっています。前回の調査では、週に1日程度と回答した方は27.7%であったことから、肉や魚をほどほどに食べる「フレキシタリアン」のスタイルが増えてきていると考えられます。
欧米人と日本人のヴィーガンに対する考え方の違い
欧米人と日本人は、ヴィーガンに対する周りの方への伝え方が異なります。もちろん、個人差があるため、すべての方があてはまるとは限りません。ここでは、欧米人と日本人の一般的な考え方の違いについて解説します。
【欧米人の場合】ヴィーガンについて主張しやすい
欧米諸国では、セレブや影響力のある人物がヴィーガンを推進するケースが多くみられます。環境問題への意識の高まりや健康志向、動物愛護などの理由から、日常的にヴィーガンの食生活を選択する方が増えているからです。
例えば、アリアナ・グランデやビリー・アイリッシュなど、さまざまな有名人がヴィーガンを公表しているため、より身近なものとして捉えられるようになりました。
自己主張しやすい国民性と、ヴィーガンであることを伝えやすい雰囲気によって、雑談のなかでも気軽にヴィーガンの話をする方が多いようです。
【日本人の場合】本音と建て前で人に合わせてしまう
ヴィーガンになりたいと思っても、状況によって我慢するシーンがあるかもしれません。例えば、友人と食事へ行く際、ヴィーガンだと公表してしまうと、相手に気を使わせてしまうのではないかと遠慮がちになる方もいるのではないでしょうか?
「自分のせいで飲食店の選択肢を狭めてしまうかもしれない」「ほかの人と同じ選択をしなかった場合、相手が自分をどう思っているのか気になる」などの不安もあるでしょう。このように、気まずくなるのを避けるあまり、本音を伝えずに合わせてしまう方もいるようです。
日本人にヴィーガンが少ない理由
日本人にヴィーガンが少ないのは、「本音と建て前」を意識しているという理由だけではありません。ほかにも考えられる原因をみていきましょう。
日本人の食文化が影響している
平成25年12月に和食がユネスコ無形文化遺産に登録されました。日本人は昔から和食に馴染みがあり、四季折々の食材を活用したり、一汁三菜を基本とした栄養バランスの良い食事を心がけたりしています。 そのため、「ご飯、焼き魚、小鉢、漬物、味噌汁」など、動物性食品と組み合わせる機会が多い和食は、ヴィーガン食とのギャップが大きいと感じる方もいるのです。少なからず食文化の影響も、ヴィーガンを遠ざける理由のひとつといえるでしょう。
残さず食べる習慣が身についている
日本では残さず食べることが美徳といわれていた時代がありました。しかし、ヴィーガンになると肉や魚、卵など、食べるものにさまざまな制限がかかります。
提供された食事のなかに食べられない食材が含まれていた場合、残さず食べる習慣が根強く残っていると、残すことに罪悪感を覚える方もいるのかもしれません。
現在は指導方針の見直しにより、給食で提供されたものをすべて食べられなくても良いとする学校が増えています。とはいえ、給食を食べ終わるまで居残りさせられていた方にとっては、食べられない食材を残すことに抵抗を感じる方もいるでしょう。
個人差はありますが、残さず食べる習慣があるとヴィーガンになるのを躊躇してしまう方もいるようです。
食材の価格が高く、購入できる場所が少ない
ヴィーガン対応の食品や食材を取り扱う専門店は、まだ十分普及していません。特に、地方では選択肢が限られてしまうため、自炊するのが大変と感じる方もいるでしょう。
また、ヴィーガン食品は一般的な食材に比べて価格が高い傾向があります。その理由として、ヴィーガン食品を生産できる工場が限られていたり、こだわりをもって原料を厳選していたりすることなどがあげられます。
その結果、経済的な理由や購入場所が限定されることにより、ヴィーガンにならない方もいるようです。とはいえ、購入場所が近くにない場合は、インターネットを活用して家にいながら購入する方法があります。
ヴィーガン対応のメニューが少ない
日本にもヴィーガン対応のレストランやカフェなどもありますが、海外に比べて少ない印象です。ヴィーガン対応のメニューが少なく、選択肢が限られてしまうことも日本人にヴィーガンが浸透しにくい理由といえます。
また、友人と外食する機会があっても、メニュー選びに悩んでしまうこともあるかもしれません。そんなときは、肉や魚もほどほどに食べるフレキシタリアンを意識すると、まわりに合わせながらも自分のスタイルを保つことができるでしょう。
まとめ
ヴィーガンが少ない理由には、日本人の食文化やヴィーガン食品が高価格になりやすいこと、購入場所が限定されてしまうなどがあげられます。
現代は、インターネットを活用すれば、いつでもどこにいてもヴィーガン食品を購入することは可能です。さまざまな食品が購入できるため、選ぶ楽しみも得られるでしょう。ヴィーガンに興味のある方は、これらの方法を活用して気軽に試してみるのもおすすめです。
エシカルフードのプラントベースフード
私たち、エシカルフード株式会社は「食生活が、地球環境を守る」をテーマに、肉食を控える食生活~Meatless Diet(ミートレスダイエット)~という、新しいライフスタイル・価値観を提唱するために、2021年6月に発足しました。
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【参考記事】
出典:「【23年1月】日本のベジタリアン・ヴィーガン・フレキシタリアン人口調査」(Vegewel)
出典:「給食は残してもいい? 学校指導の今とむかし【こんなに変わった!小学校】」(小学館)
出典:「ユネスコ無形文化遺産に登録された「和食;日本人の伝統的な食文化」とは」(農林水産省)
出典:「日本人は「みんなと一緒が好き」という大誤解」(東洋経済)