日本の豊かな食文化を楽しみにしている外国人観光客の中で、ヴィーガンやベジタリアンの方々が直面する課題は少なくありません。言葉の壁、メニューの制限、そして伝統的な日本料理に含まれる動物性食材。
しかし、近年の変化と工夫により、日本でのヴィーガン・ベジタリアン体験は着実に進化しています。
今回は、日本のヴィーガンとベジタリアンの方に対する現状と課題、食事を楽しむためのヒントを管理栄養士の下田さんにご紹介いただきます。
下田さんについては下記のプロフィールをご覧ください。
インバウンドの現状と飲食店の課題
日本政府観光局の発表によると、2024年の訪日外国人観光客数は3,489,800人と報告されています。前年同月比で27.6%増、感染症が流行する前の2019年同月比では38.1%でした。
クリスマスや年末年始のタイミングで旅行の需要が高まったとされています。
一方で、飲食店におけるインバウンド対応には課題が残ります。特に、ヴィーガンやベジタリアン向けのメニュー提供において、需要と供給が合致しない状況です。
外国人観光客が直面する3つの課題

インバウンド需要が高まるなか、外国人観光客が実際に直面する問題があります。ここでは、外国人観光客が抱える問題を3つのポイントにわけて解説します。
言葉の壁
言葉の壁は、インバウンド対応における大きな課題のひとつです。
さまざまな国の言語に対応できていない店舗があり、外国人観光客とのコミュニケーションに苦戦しているケースがあります。
特に、アレルギー表示がない、言葉の理解が追い付かないなどにより、誤解されることでトラブルの原因になりかねません。
この課題に対して、一部の飲食店では店舗の基本情報や写真、地図が多言語に展開されるシステムを活用し、スムーズなコミュニケーションを図る取り組みを行っています。
また、外国人スタッフの採用や育成にも力を入れる店舗が増えつつあるようです。
宗教上の食事制限への対応
宗教上の食事制限への対応もインバウンド問題のひとつです。
ハラール認証やコーシャ認証の取得状況は限られていることもあり、多くの飲食店では宗教上の食事の問題に対して課題があります。
メニューへの明記や情報提供の重要性は認識されつつありますが、調理器具の使い分けや管理など、実践面での課題が残っているのです。
一方で、宗教食対応を行うことで幅広い外国人観光客に食事を楽しんでいただけるメリットもあり、積極的に取り組みを進めている飲食店もあります。
ヴィーガン・ベジタリアン対応のメニューが少ない
ヴィーガン・ベジタリアン対応は、日本の飲食店にとって大きな課題といえるでしょう。ヴィーガンは動物性食品を一切摂取しませんが、ほかにもさまざまな種類があります。
例えば、五葷を避けるスタイルのオリエンタル・ベジタリアン、卵は摂取するが乳製品や肉は避けるオボ・ベジタリアンなど、人によって食生活のスタイルが異なります。
しかし、日本の飲食店ではこれらのヴィーガンやベジタリアンに関する理解が十分ではないところがあるため、適切なメニュー提供ができていないケースもあるのです。
また、代替肉や植物性チーズなどの調達が難しい場合があります。
メニュー開発においても、栄養バランスの確保や味の追求に悩んでいる飲食店もあるようです。
だし汁や調味料に動物由来の食材が含まれていることが多いため、これらの使用にも注意を払わなければなりません。そのため、ヴィーガン・ベジタリアン向けのメニューが、海外に比べて少ないのです。
日本の飲食店におけるインバウンド対応の取り組み事例

日本におけるインバウンド対応の飲食店は、海外に比べて少ないのが現状です。とはいえ、なかにはヴィーガン・ベジタリアンの方でも食事を楽しめるよう工夫しているところもあります。
ここでは、インバウンド対応の取り組み事例について紹介します。
精進料理を活かした観光プランとしての受け入れ
精進料理は、動物性食品を使用せずに調理するため、ヴィーガンやベジタリアンの観光客にもおすすめです。
日本各地の寺院では、外国人観光客向けに精進料理を提供する取り組みが増えています。
例えば、京都の有名な寺院では、座禅体験や写経体験と組み合わせた精進料理プランがあり、ヴィーガンやベジタリアンの観光客に人気です。
ヴィーガン・ベジタリアンメニューの拡充
東京の一部の飲食チェーン店では、通常のメニューに加えてヴィーガン・ベジタリアン向けのメニューを展開しています。
例えば、ラーメン店では動物性食品を使用しないスープを開発し、ヴィーガンラーメンとして提供しています。 カフェでも、豆腐や大豆ミートを活用したメニューを展開する店舗もあるようです。
ほかにも、五葷抜きメニューにも対応している飲食店もあるため、オリエンタルヴィーガンの方にもおすすめです。
東京のヴィーガン・ベジタリアンにおすすめの飲食店については下記の記事が参考になります。
ハラール対応とヴィーガンメニューの組み合わせ
飲食店のなかには、ハラール認証を取得している店舗もあります。ハラール対応とは、宗教上で食べられない食品(豚肉や豚由来の成分、アルコール類など)を避けるなど、安心して生活できるようにするための配慮です。
動物性食品を使用しないことで、宗教上の問題とヴィーガンメニューの提供、両方のニーズに対応できます。これらを組み合わせることで、多様な文化的背景をもつ外国人観光客を受け入れることが可能です。
例えば、植物由来の出汁やハラール対応の調味料を使用し、宗教上の制限がある方でも安心して食べられるよう対策されています。
フードツアーの開催
日本各地で、ヴィーガン対応のレストランを巡る「フードツアー」が開催されており、食事に制限のある外国人観光客に人気です。
特に、和菓子作り体験や味噌・醤油の工場見学と組み合わせることで、日本独自の食文化を学ぶ機会も得られます。
また、ツアーガイドが食材や調理方法について説明することで、日本の伝統的な食文化への理解を深めることができます。
インバウンド向けの飲食店が少ないときは?

「VEGAN’S LIFE」より公表された「2023年度の日本におけるヴィーガン人口」によると、20~60代の消費者のうち、日本人のヴィーガン人口は1.4%と報告されています。そのため、日本ではヴィーガン・ベジタリアン向けの飲食店が少ない可能性があります。
また、ヴィーガン・ベジタリアンの認証を取得するには、厳しい基準と費用が必要であり、飲食店にとってハードルが高いと考えられます。
インバウンド向けの飲食店が少ないときは、飲食店のホームページやSNSなどでヴィーガン・ベジタリアン向けのメニューがあるかチェックしたり、事前に電話やメールで問い合わせたりすることをおすすめします。
「HappyCow」というサイトには、ヴィーガン・ベジタリアン対応の飲食店のみが掲載されていますので、かなり参考になります。是非活用してみてください。
【HappyCow】
https://www.happycow.net/
まとめ
日本のインバウンド需要は増加傾向にありますが、ヴィーガンやベジタリアンの方にとって、食の面でいくつかの課題があります。
「言葉の壁」「宗教上の食事の制限」「ヴィーガン・ベジタリアン対応の不足」などがあげられます。海外に比べて日本は、ヴィーガン・ベジタリアン向けの飲食店が少ないのが現状です。
とはいえ、最近では精進料理やフードツアーなどインバウンド向けの取り組みも行われています。インバウンド需要は増加傾向にあるため、日本の魅力を伝える機会が増えているともいえるでしょう。
エシカルフードのプラントベースフード
私たち、エシカルフード株式会社は「食生活が、地球環境を守る」をテーマに、肉食を控える食生活~Meatless Diet(ミートレスダイエット)~という、新しいライフスタイル・価値観を提唱するために、2021年6月に発足しました。
地球にも、身体にも、動物にも優しいプラントベースドフードの企画開発・販売と“Meatless Diet”のための有益な情報発信を通じて、あなたの健康と地球環境を守りたいと考えています。
エシカルフードの商品ページはこちらから
https://ethical-food.co.jp/products/
【参考記事】
出典:「訪日外客数(2024年12月および年間推計値)」(日本政府観光局)
出典:「日本のヴィーガン人口調査2023 by VEGAN’S LIFE」