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2023.12.08

COLUMNフレキシタリアンについて/ライフスタイルベジタリアンについて/ライフスタイル今年のトレンド/ライフスタイル現代食生活について/ライフスタイル環境について考えてみよう/環境/食糧/畜産/SDGs

【肉食の見直しが進むドイツのリアル!】その背景とは?管理栄養士が解説

ドイツといえばビールに良く合うハムやソーセージ、家庭料理でお馴染みのアイスバイン(塩漬けした豚肉をやわらかく煮込んだ料理)などが有名です。

ドイツ人は肉料理を良く食べるイメージがありますが、近年では食生活に変化が見られ、フレキシタリアンを意識する方が増えています。 そこで今回は、管理栄養士の下田さんにドイツで肉食の見直しが進む背景について解説していただきます。
ライター下田さんについては下記のプロフィールを参照ください。

ドイツの食生活に変化が起きている

ドイツの食文化は年々変化してきています。特に、ヴィーガン人口の増加は顕著です。
米国農務省(USDA)が発表しているヴィーガン人口の推移は以下のとおりです。

【ヴィーガン人口の推移】
2012年:10万人
2022年:150万人
この結果から、ヴィーガン人口は10年間で140万人も増えていると推測できます。
さらに、人口の半数以上の方が、自分はフレキシタリアンだと認識していることもわかりました。

肉の消費を減らすために国全体で食生活の見直しが進んでいる背景も、ヴィーガン人口の増加につながったといえるでしょう。
英国気候市民会議による報告では、肉や乳製品の消費を完全にカットするのではなく、食生活をシフトして肉や乳製品の消費を20%から40%削減することを提唱しています。
このように具体的な数値が示されたことで、食生活の変化が求められるようになりました。

管理栄養士が考察!なぜ多くのドイツ人が肉を食べなくなったのか?

肉

ドイツで肉の消費が減少した理由として、「環境問題」と「動物愛護」「健康志向の高まり」などが考えられます。なぜ植物性食品中心の食生活へシフトしていったのか、詳しくみていきましょう。

環境問題

牛や羊、やぎなどの反すう動物のゲップやおならには、温室効果ガスのひとつであるメタンガスが多く含まれていて、地球温暖化を助長する働きがあります。
そのため、肉の消費を減らすことにより、家畜から排出されるメタンガスなどの温室効果ガスの削減が期待できます。

また、家畜を育てるための飼料栽培には、広大な土地や水など多くの資源が必要です。飼育のためのスペースを確保するために、森林伐採などにより土地を作らなければなりません。
林には炭素を吸収して蓄える働きがあるので、伐採が進むことで気候変動に悪影響をおよぼすおそれがあります。
肉の消費を抑えることで環境にも優しい生活が目指せるため、ドイツではフレキシタリアンが増えています。

動物愛護

猫や犬のようにペットとして可愛がられる動物がいる一方で、牛や豚など食べられるために育てられる動物がいます。
すべてではありませんが、家畜が劣悪な飼育環境で育てられていたり、食肉処理の過程で苦しんでいたりすることがあります。
そのため、「動物の命を大切にしたい」という想いから、肉を食べない選択をする方が増えました。

健康志向の高まり

健康ブームも肉の消費が減った理由のひとつです。
動物性食品を食べ過ぎていた場合、控えることで肥満などの生活習慣病の予防に役立ちます。

また、ドイツのスーパーでは植物性食品の品数が多く、気軽に購入できるのもポイントです。
肉を減らすためのアクションが取りやすいことも、肉食の減少につながっているといえるでしょう。
代替肉で作ったハムやソーセージなどは、通常の味や見た目にそっくりなものも増えています。
購入しやすさやおいしく食べられることも、フレキシタリアンを続けやすいメリットです。

労働環境の見直し

感染症の拡大により、「なぜ肉が安く手に入るのか?」という疑問を多くの方がもつようになりました。
あるとき、ドイツの食肉工場でクラスター感染が発生し、食肉加工工場で働く外国人労働者たちが、劣悪な環境で働いていたことが露呈したのです。
肉を安く売るには企業努力もありますが、外国人労働者を安く雇うことで、コストを抑えているケースもあるのかもしれません。
そうした実態が表面化したことで、食生活を見直すきっかけになったようです。

管理栄養士が考察!日本でヴィーガンやフレキシタリアンが浸透しにくい理由

野菜

ドイツのフレキシタリアンは人口の半数以上なのに対し、日本のフレキシタリアンはまだそれほど多くありません。
株式会社フレンバシーが実施した「日本のベジタリアン・ヴィーガン・フレキシタリアン人口調査 by Vegewel」によると、フレキシタリアンは日本人全体の19.9%でした。
5人に1人がフレキシタリアンであり、ヴィーガンに至っては全体の5.9%ほどです。
ここからは、日本でヴィーガンやフレキシタリアンが浸透しにくい理由について解説します。

ヴィーガン対応の飲食店が少ない

昔に比べてヴィーガン対応の飲食店が増えてきましたが、海外と比較するとまだまだ多いとはいえません。
ヴィーガン対応の飲食店でも、飲食店からの情報発信や店舗内外での表示が少なければ、利用するのをためらってしまう方もいるでしょう。
とはいえ、安心して食べられるヴィーガンカレーのお店や、すべてマクロビオティックに準じたヴィーガンメニューを提供しているお店もあります。
おいしい料理が食べられる飲食店を見つける楽しみもあるかもしれませんね。

「いただきます」に込められた命の重みを意識している

日本では食事の前に「いただきます」、食べ終わったら「ごちそうさま」と食事の挨拶をする習慣があります。
小さいころから当たり前のように、言葉にしていた方も多いのではないでしょうか?
「いただきます」とは、ただ単に食事を頂くという意味だけでなく、「生き物の命をいただきます」という意味も込められています。
さらに、生産者や調理してくれた方など、食べ物を口にするまでに関わった人々への感謝の心が表現されています。

動物や植物など食べ物をいただくことは、生命を維持するために欠かせません。食べ物を粗末にしたくないという気持ちから、完全菜食主義のヴィーガンになるのは難しいと感じる方がいるようです。
反対に欧米のベジタリアンでは、「動物を食べるとかわいそうだから、食べるのを止めて菜食主義になる」といった思考になりやすいといわれています。

周りに合わせてしまう

欧米人は自分の意見をハッキリ伝える方が多いのに対し、日本人は空気を読みながら周りに合わせる傾向があります。
欧米人の場合、「動物がかわいそう」「地球のために食事を変える」「健康に良いと思ったから」など、ヴィーガンやフレキシタリアンになる理由をしっかりと主張します。

しかし日本人の場合、本当はヴィーガンになりたいと思っていても、複数で食事をするときに困るからと諦めてしまうこともあるでしょう。
「自分だけ別メニューになると周りに迷惑をかけるから」など、自分だけ違う行動を取ることを躊躇してしまいます。

簡単に食生活をチェンジできる!フレキシタリアンがおすすめ

一切肉を食べない生活が物足りたく感じてしまう方には、フレキシタリアンがおすすめです。ときには肉も魚も食べるスタイルで、比較的自由に食事が選択できます。
友達とランチに行くときは気にせず食べるけれど、普段の食生活では肉を食べずに過ごすなど、臨機応変に対応可能です。

代替肉として大豆ミートなどを活用すれば、料理のレパートリーも広がります。時間がないときは調理済みの大豆ミートを使用するのもひとつの手です。
市販品も上手に活用しながら、無理なく楽しみながら続けていきましょう。

まとめ

ドイツでは、フレキシタリアンになる方が増え続けています。その背景には、環境問題や動物愛護、健康志向の高まりなどが挙げられます。
ドイツでフレキシタリアンの人口が増える一方で、日本ではなかなか浸透しにくいのが現状です。

日本ではヴィーガン対応の飲食店が少なく、探すのに苦労することもあるでしょう。
また、食べ物に対する謙虚な気持ちから、感謝しながら残さず食べようとする方が多いようです。
日本の風習から完全菜食主義になるのは難しくても、ゆるベジタリアン(フレキシタリアン)の選択肢もあるので、ぜひ試してみてくださいね。

【出典】
「ドイツでは植物由来の食品が主流に」米国農務省(USDA)
https://fas.usda.gov/data/germany-plant-based-food-goes-mainstream-germany#:~:text=Germany%3A%20Plant%2DBased%20Food%20Goes%20Mainstream%20in%20Germany,-January%2025%2C%202023&text=The%20number%20of%20vegans%20is,good%20opportunities%20for%20U.S.%20exporters.https://apps.fas.usda.gov/newgainapi/api/Report/DownloadReportByFileName?fileName=Plant-Based%20Food%20Goes%20Mainstream%20in%20Germany_Berlin_Germany_GM2023-0002.pdf

「Plant-Based Food Goes Mainstream in Germany」米国農務省(USDA)
https://apps.fas.usda.gov/newgainapi/api/Report/DownloadReportByFileName?fileName=Plant-Based%20Food%20Goes%20Mainstream%20in%20Germany_Berlin_Germany_GM2023-0002.pdf

「The Guardian「The wurst is over: why Germany now loves to go vegetarian 」
https://www.theguardian.com/world/2020/sep/27/the-wurst-is-over-why-germany-land-of-schnitzels-now-loves-to-go-vegetarian

【参考記事】
https://macaro-ni.jp/33233
https://www.ndr.de/nachrichten/schleswig-holstein/Nach-Kritik-an-Landschlachterei-in-Flintbek-Kreis-ordnet-Schliessung-an,schlachthof684.html
http://www.newsdigest.de/newsde/features/10819-vegetarian-vegan/
http://www.newsdigest.de/newsde/column/doctor/13501-1189/
https://vegewel.com/ja/style/statistics3
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000048.000016326.html
https://www.mlit.go.jp/kankocho/news08_000326.html
https://www.theguardian.com/world/2020/sep/27/the-wurst-is-over-why-germany-land-of-schnitzels-now-loves-to-go-vegetarian
https://globe.asahi.com/article/14747404
https://takii-h.oiu.ed.jp/column/index.php?c=column_view&pk=1605764329
https://happy-quinoa.com/germany-vegan/
https://veganoji.jp/germany-meat-consumption-record-low/
https://sputniknews.jp/20220417/10642560.html
https://globe.asahi.com/article/13645780
https://www.anti-a.org/news/jp/goodbye-to-sausages-germany-becomes-the-worlds-no-1-vegan-power