人生100年時代といわれるようになり、健康への意識が高まった方は多いのではないでしょうか?
しかし、なかには心身の不調に気づかず過ごしている方がいます。
「何となくいつもと違う」と感じるときほど、身体の声に耳を傾けてあげてくださいね。
今回は、管理栄養士の下田さんに未病の意味や不調に気づいたときの対策について解説していただきます。管理栄養士の下田さんのプロフィールについては下記の記事をご覧ください。
最近よく耳する「未病」とは?
未病とは、健康と病気をひとつの線上に示したときに中央あたりに位置する状態のことです。
例えば健康を10、病気を0としたときに未病は5のあたりというイメージです。
何となく調子が優れないけれど寝込むほどではない状態のときは、健康と病気のどちらにも分類できません。
このようにハッキリと分けられないときに、未病という言葉が適しているといえます。
また、日本未病学会における未病の定義は下記の通りです。
・自覚症状はないが検査では異常がある状態
・自覚症状はあるが検査では異常がない状態
両方ある場合は「病気」と定義され、どちらかひとつの場合は「未病」に当てはまります。
超高齢化社会だからこそ未病予防を
近年、超高齢化社会の影響により「人生100年時代」といわれることが増えました。
厚生労働省の資料では、65歳以上の人口は1970年に25.6万人に対し、2050年には約295万人以上になると予想されています。
また、100歳以上の全国の高齢者は1963年で153人であったのに対し、2050年には約53万人になるといわれています。
100歳まで生きるのが当たり前になりつつある現代において、未病の段階から健康を意識した生活を送ることで、充実した日々を送ることができるでしょう。
未病と予防医学の違い
未病と予防医学は似ているようで違います。
健康と病気の真ん中である未病に対し、予防医学は特定の疾患になることを予防する意味合いが強いからです。
予防医学は下記のように3つに分類されます。
・一次予防:予防接種などにより病気にかからないようにすること
・二次予防:病気を重症化させないこと
・三次予防:病気になったあとのリハビリなど、再発防止や機能回復に努めること
つまり、予防医学は特定の疾患を軸として考えられているといえます。
未病の場合、特定の疾患を意識するよりも、心身の健康に重点をおいた考え方が根底にあるのです。
未病を引き起こす要因
未病とは健康でも病気でもない状態のことを示しますが、今の生活次第でどちらに転ぶかわかりません。
仕事の付き合いで飲み会が続いていたり、ジャンクフードを食べ過ぎていたりする場合、糖質や脂質を摂り過ぎてしまうおそれがあります。
野菜が不足していれば、身体に必要なビタミンやミネラルなどが補えず、不調の原因につながります。
また、特定の食べ物ばかり食べていると栄養の偏りを招き、さまざまな健康問題を引き起こすリスクが高まります。
デスクワーク中心の生活など、運動不足気味の方も安心できません。
摂取エネルギーが消費エネルギーを上回ると、体内に脂肪が蓄積されやすくなります。
そのため、運動による消費エネルギーが少ないと、摂取エネルギーとのバランスが取りにくくなってしまうのです。
睡眠不足や喫煙、ストレスなども未病を引き起こす要因となるため、注意しましょう。
未病に気づくには?
病気ではないけれど、健康でもない状態のことを未病と示します。
未病かもしれないと思ったときは、下記の項目をチェックしてみましょう。
□何となくだるい
□食欲がない
□やる気がでない
□冷えが気になる
□寝つきが悪い
□疲れやすくなった など
上記のなかで思い当たる項目があった方は、早めに健康維持につながる対策を実践してみてくださいね。
とはいえ、不調に気づかず生活している方も少なくありません。
主観でわかりにくいときは、年に一度の健康診断を活用しましょう。
自分では気づきにくいことでも、過去の血液検査のデータと最新のものを見比べると客観的に把握することができます。
未病に気づいたときの対策
未病は心身のバランスが乱れ始めているサインです。
未病の状態に気づいたら、自分の体調や生活習慣を振り返ってみましょう。
日々の生活のなかに健康を維持するヒントが隠れているかもしれません。ここでは、食生活を意識した対策について解説します。
栄養バランスの良い食事を心がける
偏った食生活を続けていると、身体に必要な栄養が不足してしまいます。
そのため、主食・主菜・副菜を組み合わせた栄養バランスの良い食事を心がけましょう。
一汁三菜の和食中心に献立を考えると、栄養バランスを整えやすくなります。
また、なるべく3食規則正しく食べることが大切です。
食事時間が夜遅くなってしまうときは、夕方におにぎりなどの軽食を取り入れて調整すると良いでしょう。
帰宅後におかずを食べるようにすれば、食べ過ぎ防止に役立ちます。
適度な運動を行う
運動習慣をつけることは、未病対策につながります。
運動を取り入れることで、筋肉や骨を強化する働きがあるだけでなく、脂肪がつきにくい体質を目指せます。
血糖値や中性脂肪が高めな方は、適度な運動を取り入れましょう。
ウォーキングやジョギングなど、無理なく続けられる運動から始めてみるのがおすすめです。
質の良い睡眠を目指す
睡眠不足も未病に関係しています。
一般的に睡眠時間の目安は7時間前後といわれていますが、ぐっすり眠れたかどうかは人それぞれ体感が異なります。
たくさん寝たからといって、健康になるとも限りません。
日中元気に過ごせる睡眠時間を見つけて、自分に合った睡眠時間を意識しましょう。
睡眠の質を高めるために、「寝る3時間前までに食事を済ませる」「寝る1~2時間前までに入浴する」「就寝前にスマートフォンやパソコンを見ない」「就寝前にカフェイン入りの食べ物や飲み物を摂らない」など試してみてください。
未病を防ぐためにはプラントベースの食生活もおすすめ
積極的に野菜や大豆製品などの植物性食品を中心とした「プラントベースの食生活」も、未病対策になります。
プラントベースの食生活では、積極的に野菜や大豆製品などを摂取し、肉や魚などの動物性食品を控えます。
特に、脂身の多い肉はカロリーや脂質が多いため、食べ過ぎると体内に脂肪を溜め込みやすくなってしまいます。
カロリーや脂質を摂り過ぎると、健康を害してしまうおそれがあり注意が必要です。
その点、プラントベースの食生活を意識すれば、自然と動物性食品を食べる量が減り健康維持につながるでしょう。
まとめ
未病とは、健康でも病気でもない状態のことです。
自分で身体の不調に気づけない場合は、健康診断を活用すると良いでしょう。
未病は病気になる一歩手前の状態ですが、健康を維持するためにできることはたくさんあります。
まずは、食事・運動・睡眠などの生活習慣を整えて、人生100年時代を元気に過ごしましょう。
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【参考記事】
出典:「未病指標について」(厚生労働省)
出典:「5月 はじめよう 未病対策」(全国健康保険協会)
出典:「身体活動・運動不足|生活習慣病とその予防」(日本生活習慣病予防協会)