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2024.03.31

COLUMNフレキシタリアンについて/ライフスタイルベジタリアンについて/ライフスタイル今年のトレンド/ライフスタイル新年企画/ライフスタイル現代食生活について/ライフスタイル環境について考えてみよう/環境/食糧/畜産/SDGs

将来肉が食べられなくなる日はくるの?今後の食の在り方について考えてみよう!

「将来、肉が食べられなくなる日は来るのだろうか……」
その未来は着々と近づいているのかもしれません。

世界では今後人口が増え続けていくことが予測されています。また異常気象などにより、作物の栽培に影響を及ぼす可能性もあります。
野菜に限らず食肉の供給逼迫も懸念されるでしょう。

そこで今回は、管理栄養士の下田さんに将来の食卓事情や今後の食の在り方について解説していただきます。
ライター下田さんについては下記のプロフィールをご覧ください。

「将来肉が食べられなくなる」といわれる理由

将来肉が食べられなくなるかもしれないといわれる理由として、「人口増加」と「気候変動」のふたつが挙げられます。
まずは、なぜ肉が食べられなくなるといわれているのか、確認していきましょう。

人口増加による食料の逼迫

国連の報告では、世界人口は2030年にさらに増加すると予想されています。
現在よりも6~7億人増え、85億人に達成する見込みです。
また2050年には97億人に増えるといわれており、2080年代中に約104億人でピークに達すると推測されています。

人口増加は食料の需要と供給のバランスにも、影響を及ぼす可能性があるため注意が必要です。
このまま人口が増え続けると、人口に対する食料不足がみられるかもしれません。
この傾向は2050年に向けてさらに進む恐れがあります。

また発展途上国が経済成長すると、食生活にも変化がみられるでしょう。肉を食べるようになると、食肉の需要がますます高まります。
「畜産を増やせば解決できるのでは?」と考える方もいますが、簡単には生産量を増やせません。
家畜の飼育には、育てるために広大な土地の確保や餌の調達などが必要だからです。
使用できる土地には限りがあるため、大量生産は難しいのが現状です。

一方、日本の場合は少子高齢化が進むことで、人口増加よりも人口減少に傾く確率が高いでしょう。
輸入食品を多く活用している日本は、食料不足が生じた際に必要量を確保できなくなる可能性があります。
人口増加はもちろん、人口減少が見られる国でも、肉が食べられなくなる可能性があるといえます。

出典:「2022年7月11日付 国連経済社会局プレスリリース」(国際連合広報センター)
https://www.unic.or.jp/news_press/info/44737/#:~:text=%E5%9B%BD%E9%80%A3%E3%81%AE%E6%9C%80%E6%96%B0%E3%81%AE%E4%BA%88%E6%B8%AC,%E3%82%82%E6%8C%87%E6%91%98%E3%81%97%E3%81%A6%E3%81%84%E3%81%BE%E3%81%99%E3%80%82

異常気象による生育の低下

日本の年間の平均気温は、100年あたり1.28℃の割合で上昇しているといわれています。
異常気象による豪雨や暖冬などがみられ、自然災害が増えています。以前に比べて災害が増えたと感じる方もいるでしょう。
また夏季に猛暑が続くと家畜の繁殖性の低下も見られるようになり、食肉の生育や肉質の低下が懸念されます。

出典:「異常気象のリスクについて【異常気象】」(農林水産省)
https://www.maff.go.jp/j/zyukyu/anpo/attach/pdf/risk_2022-1.pdf

肉が食べられなくなることへの影響

人口増加による食料不足などから肉が食べられなくなると、どのような影響がみられるのでしょうか?
考えられるのは、栄養素が不足しやすくなることです。

肉などの動物性食品には、豊富なタンパク質が含まれています。タンパク質は身体を作るうえで欠かせない栄養素のひとつです。
筋肉や臓器、肌、髪、爪などの材料以外にも、ホルモン、代謝酵素、免疫物質などになります。

肉にはタンパク質のほかにも、ビタミン・ミネラルの供給源にもなるため、ほかの食品から不足分を補うことが大切です。
不足しがちなタンパク質や鉄を補うために、豆類や大豆製品、緑黄色野菜などを積極的に摂りましょう。
ビタミンB12は海苔に比較的多く含まれているため、料理に加えてみるのもおすすめです。

肉の消費が減ることのメリット

環境を守る

肉の摂取量が減った場合、栄養の偏りに気をつけなければなりません。
とはいえ、肉の消費量が減るとさまざまなメリットもあります。
ここからは、肉食の摂取量が減ることのメリットについて解説します。

環境負荷を軽減できる

肉の消費量と温室効果ガスの削減は、密接に関係しています。
温室効果ガスは地球温暖化の原因といわれているため、なるべく削減するよう努めることが大切です。
農林水産省の報告によると、1キロの牛肉を作るにはトウモロコシが11キロ必要とされています。豚肉の場合は6キロ、鶏肉の場合は4キロ必要です。

またトウモロコシなどの飼料を栽培するには、多くの土地や水が欠かせません。
食肉として食卓に並べられるまでにはさまざまな資源が使われるので、環境への影響が考えられます。

国連環境計画の報告では、人間の活動による世界の温室効果ガスの排出量は、CO2に換算すると553億トンとされています。
世界の温室効果ガスの排出量は、毎年1.5%ほどの割合で増加しており、今後も増え続けていくことが予想されるでしょう。
特に、牛のげっぷには温室効果ガスのひとつであるメタンが含まれているため、注意しなければなりません。
メタンは二酸化炭素の次に多いとされる温室効果ガスです。

さらに環境に与える影響は二酸化炭素の28倍といわれています。そのため、肉の消費が減れば地球温暖化を防ぐことにつながるでしょう。

出典:「お肉の自給率」(農林水産省)
https://www.maff.go.jp/j/zyukyu/zikyu_ritu/ohanasi01/01-04.html
出典:「国際的な議論の潮流」(環境省)
https://www.env.go.jp/policy/hakusyo/r02/pdf/1_1_02.pdf

動物愛護

食肉のために育てられる動物は、自由を制限された環境で飼育されます。広大な牧場では伸び伸びと育てられますが、狭い牧場ではそのような飼育はできません。
食味を増すために太らされ、食肉処理されて食卓に並びます。
肉の消費量減少は、食肉のために飼育される動物の減少にもつながります。動物の命を守るための行動に結びつくといっても過言ではありません。

バランスの良い食生活を意識するようになる

今まで肉の摂取量が多かった方にとって、肉の消費を減らすことは食生活を見直すきっかけになるでしょう。
GlobeScan社で実施された31ヶ国、30,000人を対象とした調査では、42%の方が今後10年で植物ベースの食事が当たり前となり、肉を食べること自体が減っていくのではないかと回答しました。
この結果からほぼ半数近くの人は、環境に配慮した健康的な食事を望んでいることがわかります。

またオックスフォード・マーティン・スクールの研究者によると、赤身肉の摂取量の減少と健康には相関関係があるとされています。
赤身肉の減少と果物と野菜の摂取量の増加、カロリーの削減により過体重や肥満の方が減ったとされているからです。

果物や野菜の摂取量に比べて赤身肉や加工肉が多い食事を摂っていると、栄養バランスも崩れがちです。これらの食生活は健康への影響も考えられるため、肉を減らすことで自然と身体にやさしい食事を選択できるようになるでしょう。

出典:「Grains of Truth2022」(GlobeScan)
https://eatforum.org/content/uploads/2022/11/EAT-Forum-Report.pdf

出典:「Plant-based diets could save millions of lives and dramatically cut greenhouse gas emissions」
https://www.oxfordmartin.ox.ac.uk/news/201603-plant-based-diets/

肉が食べられなくなる未来に備えてできること

将来、人口増加や気候変動により肉が食卓に並ぶ回数が減少するかもしれません。そのため、今からミートレスな食生活に慣れておくことをおすすめします。
食生活を急に変えたくない方は、植物性食品を中心に肉も魚も適度に食べるフレキシタリアンのスタイルからはじめてみるのも良いかもしれません。

フレキシタリアンであればヴィーガンよりも緩く始められるため、食べられないストレスから解放されます。
大豆や大豆製品などを上手に取り入れながら、楽しく環境にやさしい食生活へシフトしていきましょう。
大豆ミートなどを使って献立を立てれば、レパートリーも広がります。
忙しい日は大豆ミートのレトルト食品を使っても問題ありません。家事の負担を減らせるので、無理なく続けられます。

まとめ

今後、人口増加や気候変動の影響により、肉食が少なくなっていくと推測されています。またパンデミックなどは、この先ゼロになるとは言い切れません。
将来のことは未知数ですが、心の準備や食生活を見直すなどの行動は今からでも意識できます。
さまざまな可能性を考えて、食の多様性に向き合ってみてはいかがでしょうか?
特に畜産は環境への負荷が大きいため、この機会にミートレスな食生活にシフトするのもおすすめです。

【参考記事】
https://president.jp/articles/-/45581
https://toyokeizai.net/articles/-/596646
https://adaptation-platform.nies.go.jp/conso/report/5-2.html#:~:text=%E5%A4%8F%E5%AD%A3%E3%81%AE%E6%9A%91%E7%86%B1%E3%81%AF%E3%80%81%E5%AE%B6%E7%95%9C,%E5%A2%97%E5%A4%A7%E3%81%99%E3%82%8B%E3%81%A8%E4%BA%88%E6%83%B3%E3%81%95%E3%82%8C%E3%82%8B%E3%80%82
https://toyokeizai.net/articles/-/596646
https://www.womenshealthmag.com/jp/food/g35316433/what-happens-to-your-body-when-you-give-up-meat-other-animal-products-20210222/
https://toyokeizai.net/articles/-/596646?page=2
https://www.utopiaagriculture.com/journal/546
https://www.env.go.jp/press/110696.html#:~:text=%E3%83%A1%E3%82%BF%E3%83%B3%E3%81%AF%E4%BA%8C%E9%85%B8%E5%8C%96%E7%82%AD%E7%B4%A0%E3%81%AB,%E7%AD%89%E3%80%81%E5%A4%9A%E5%B2%90%E3%81%AB%E3%82%8F%E3%81%9F%E3%81%A3%E3%81%A6%E3%81%84%E3%81%BE%E3%81%99%E3%80%
https://eatforum.org/content/uploads/2022/11/EAT-Forum-Report.pdf
https://www.utopiaagriculture.com/journal/546
https://president.jp/articles/-/45581