オランダは風車やチューリップのほかに、チーズの輸出国としても有名です。
一方、オランダ国内では動物由来の食品を購入する方が減少傾向にあるといわれています。
酪農王国であり畜産が盛んであるにもかかわらず、なぜ動物性食品の消費が減っているのでしょうか?
今回は管理栄養士の下田さんにオランダの食生活に変化が起きている理由について解説していただきます。
管理栄養士の下田さんについては下記のプロフィールをご覧ください。
世界から見るオランダと動物性食品
オランダの農畜産物輸出額は米国に続く世界第2位で、日本にも豚肉やチーズなどを輸出しています。
九州とほぼ変わらない国土面積ですが、牛乳やヨーグルト、バターなどの乳製品のほかにポークなどの畜産品の生産が盛んです。
特に、生産量が最も多いゴーダチーズはオランダを代表するマイルドな味わいのチーズであり、世界中で親しまれています。
またゴーダチーズに続いて生産量が多いエダムチーズは、チーズ全体の20%の生産量です。
このようにオランダで生産される動物性食品は、世界各国で幅広く使用されていることがわかります。
オランダで実施されている畜産に対する環境対策
オランダは畜産業が盛んであることから、環境規制の観点で酪農の在り方に変化が生じています。
家畜の糞尿はアンモニアの発生につながり、過剰なアンモニアは農場から川に流れ汚染され、藻類の繁殖を促し地表水の酸素を減らすなど環境に悪影響を与えます。
また、家畜から発生するメタンや一酸化二窒素などは地球温暖化の原因のひとつです。
そのためオランダでは、EUが定めた「硝酸塩指令」などの環境規制に従い環境対策がとられています。
硝酸塩指令とは地下水や地表水に硝酸汚染がないかの確認や、リスクの高い場所を「硝酸塩脆弱地域」に指定し、汚染防止のための行動計画の遵守を義務づけることです。
加盟各国で定める行動計画は以下の通りです。
・家畜排せつ物と化学肥料を、土壌やその他からのバランスを見て適正に使用する
・家畜排せつ物の農地への還元量の上限を定める
・作物が生育できない冬期間における畜産排せつ物を使わず、これらを貯留できる施設を整備する
・地下水や地表水を汚染しやすい場所や時期に、肥料や堆肥を使わないなどの基準を定める
仮に農地に施用できる量を上回る家畜排せつ物が発生した場合、肥料として加工することが義務づけられています。(年間発生量の約8%を肥料として輸出する)
また環境対策として、2016年から2017年にかけて飼養頭数削減、営農中止などが求められたことで、飼養頭数の1割強が淘汰されて約600戸が営農を中止しました。
出典:「畜産物の国内生産を巡る状況」(農林水産省)https://www.maff.go.jp/j/council/seisaku/tikusan/attach/pdf/210624siryo-18.pdf
出典:「9. 海外の窒素循環政策と研究の動向」(環境省)https://www.env.go.jp/content/900539201.pdf
オランダで肉離れが進む理由は政府の環境対策だけではない
オランダで動物性食品を控えるようになった理由は、畜産における政府が提示した環境問題の取り組みだけではありません。
「動物性食品に対する意識の変化」「代替肉の市場拡大」「肉の広告規制」などが関係しています。
なぜ肉離れが進んでいるのか、その理由をひとつずつ確認していきましょう。
動物性食品に対する意識の変化
キエスコンパスが行った調査によると、オランダ人の約70%は食肉として加工される動物の扱われ方に不快感を覚えているとされています。
2/3のオランダ人は動物性食品の摂取を減らして、植物性食品の摂取量を増やしたいと考えているようです。
健康意識の高まりにより果物や野菜の量を増やし、赤身肉や飽和脂肪酸を減らすようになったことも、植物性食品を好むきっかけとなったといえるでしょう。
また半数以上の人が気候や動物福祉に悪影響を及ぼす可能性のある製品に対して、ラベルの貼付を望んでいます。
さらに55%の人が畜産に対する政府補助金の廃止を求めていることからも、動物性職員に対する意識の変化が伺えます。
出典:「Beleidsvoorstellen voor de eiwittransitie」(Kieskompas)
https://proveg.com/nl/wp-content/uploads/sites/6/2023/09/Eiwittransitie_-wat-wil-Nederland-in-2024_.pdf
代替肉の市場の拡大
スーパーマーケットで気軽に代替肉が買えるようになったことも、肉離れが進む原因のひとつといえるでしょう。
オランダのスーパーマーケットでは代替肉などの製品の取り扱いが増えています。
国内最大のスーパーマーケットである「アルバート・ハイン」では、ヴィーガン用のプライベートブランドの商品を70品目増やしました。
ベジタリアン料理への関心を高めるためにキャンペーンも実施されているそうです。
スーパーマーケットで代替肉の商品が増えると、消費者が購入しやすくなります。
代替肉などのパッケージにエコを連想させる緑色を用いるなど、イメージしやすいように工夫を凝らしたものもあります。
肉の広告の規制
畜産業は温室効果ガスの排出量が多く、気候変動に影響を与えやすいといわれています。
そのため人口16万人のオランダのハールレム市では、2024年から世界初となる食肉関連の広告を禁止する施策を実施する見込みです。
ハーレム市内のバス停などの公共交通機関や街中の広告など、公共の場における肉に関する広告表示が禁止されます。
対象となるのはスーパーで販売されている食肉全般や、ファストフードで肉が使われているメニューなどです。
肉の広告だけでなく、航空機や化石燃料、化石燃料で走る自動車の広告についても2024年から禁止されるといわれています。
とはいえ、環境に配慮して持続可能な方法で作られた食肉製品についての規制は、現時点では定かではありません。
食肉関連の広告が禁止される一方で、牛乳の代りにオーツ麦で作られた飲料もあるなど、食生活を豊かにするためのきっかけ作りとして広告が用いられているところもあります。
日本でも温室効果ガス削減に努めることは大切
日本でも温室効果ガスによる地球温暖化は深刻な状況です。
家畜の飼育により地球温暖化の原因といわれているメタンなどの排出も増してしまいます。
水質汚染や土地の減少などの影響もみられるため対策が必要です。
例えば、肉の代わりに植物性食品を用いることなどが挙げられます。
日本国内でもさまざまな企業で代替肉の商品が開発されたり、テレビ番組などで植物性代替肉のブームが取り上げられたりすることで、徐々に代替肉の認知度は高まってきているといえるでしょう。
とはいえ、コンビニなどでも気軽に代替肉が購入できる欧州諸国と比較すると、まだまだ浸透しているとは言い切れません。
日本人の食肉消費量が他国に比べて半分程度であり、健康のために代替肉を増やそうとするには動機が弱いと考えられます。
境問題や動物愛護に対する関心も欧米諸国に比べると低いため、肉食を避けるのではなく無理なく続けられる食生活を目指すことが大切です。
そこで、肉食中心の食生活から植物ベースの食生活にシフトする方法を試してみるのもおすすめです。
しかし肉が食べられないなど、食事に制限がかかると食生活にストレスを感じやすくなる方もいます。
まずはミートレスな食生活としてフレキシタリアンを意識してみてはいかがでしょうか?
フレキシタリアンは肉や魚を完全に無くすのではなく、時には動物性食品も食べる柔軟なベジタリアンのスタイルを取ります。
自由に食事を選択しながら環境への配慮ができるのがポイントです。
まとめ
ヴィーガン大国オランダで食生活に変化がみられ始めています。オランダ政府は、動物性タンパク質の割合を2030年までに40%以下に減らすよう勧告しています。
また国民の肉離れが進んでいることや、代替肉の市場拡大、肉の広告の規制も食生活を見直すきっかけになったといえます。
日本でも地球温暖化の原因である温室効果ガスを減らすために、ミートレスな食生活などを心がけてみてはいかがでしょうか?
【参考記事】
https://www.meg-snow.com/cheeseclub/knowledge/world_journey/holland/
https://www.meiji.co.jp/meiji-shokuiku/worldculture/netherlands/
https://dutch-agri.jp/meat.html
https://www.alic.go.jp/joho-c/joho05_000906.html
https://www.alic.go.jp/chosa-c/joho01_002124.html
https://www.naro.go.jp/project/results/laboratory/nilgs/2015/15_090.html
https://eleminist.com/article/1696
https://proveg.com/nl/wp-content/uploads/sites/6/2023/09/Eiwittransitie_-wat-wil-Nederland-in-2024_.pdf
https://bene.fun/articles/5560
https://www.alic.go.jp/joho-c/joho05_001639.html
https://bene.fun/articles/5560
https://www-government-nl.translate.goog/?_x_tr_sl=en&_x_tr_tl=ja&_x_tr_hl=ja&_x_tr_pto=sc
https://bene.fun/articles/5560
https://ideasforgood.jp/2022/09/27/haarlem-bans-meat-adverts/
https://veganoji.jp/haarlem-first-city-to-ban-public-meat-ads/
https://note.com/spiderman886/n/ncd02b47bb732
https://cs2.toray.co.jp/news/tbr/newsrrs01.nsf/0/8EA01D6797D94B5B492585E5002D6403/$FILE/K2009_011_015.pdf
https://en.rli.nl/press/2018/meeting-climate-targets-requires-a-new-food-policyhttps://eleminist.com/article/1696
エシカルフードのプラントベースフード
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