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2023.11.24

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栄養士から見た【スタバのプラントベースフード】へのこだわりと魅力とは?

動物性食品を使わないプラントベースフード。ヴィーガン・ベジタリアンではなくても健康を考えて選ぶ人が増えています。
近年は大手企業でもプラントベースの商品が開発されるようになり、その広がりは今や日本でも珍しいものではありません。

今回は栄養士のかやのさんに、スターバックスコーヒーを例に近年のプラントベース商品への取り組みを見ながら、プラントベースフードの魅力をご紹介していただきます。
栄養士かやのさんについては下記のプロフィールをご覧ください。

世界・日本のプラントベースフードの広がり

冒頭でご紹介したように、プラントベースフードとは動物性食材を使わずに作った植物由来の食品です。
乳製品や卵をつかわないため、アレルギーを持つ人も食べることが可能です。

世界ではプラントベース商品は身近なものになっています。
スーパーでは豆乳だけではなく様々な種類の植物性ミルクが並んでいます。
また、マクドナルドやバーガーキング、KFCなどの大手飲食チェーン企業でも代替肉を使用した商品が展開され、多くの消費者に好まれています。

日本ではどうでしょうか。ここ近年で急速にプラントベースが注目されるようになり、スーパーやコンビニでも商品を目にするようになりましたよね。
大手飲食チェーン企業ではモスバーガーやドトール、コメダ珈琲(KOMEDA is)がプラントベース商品を積極的に展開しています。
しかし、日本のマクドナルドやKFCではプラントベース商品は販売されていません。

大手以外の飲食店においては、東京や大阪などの大都市ではヴィーガンやベジタリアン対応の店舗が増える一方、地方都市ではまだまだ少ない印象を持ちます。
そのような日本のプラントベース市場の中で、他とは少し異なる視点から商品展開をしているのは「スタバ」ではないでしょうか。

スタバのプラントベースフードへのこだわり

スターバックス

世界、そして日本でも人気の大手コーヒーチェーンといえばスターバックスコーヒーです。
新作が出ればすぐに情報が拡散され、若者を中心に商品を映した画像がSNSを流れる光景は皆さんもご存じの通りかと思います。

しかし、皆さんはスタバにプラントベース商品があることをご存じでしょうか?
昨年6月には今まであったプラントベーススイーツに加えて、新たに大豆ミートを使用したフィローネ(サンドイッチ)やマフィンのフードメニューが増えました。
今夏の新作でもプラントベースフードを取り入れるなど、スタバはプラントベース商品を積極的に採用し、展開しています。

スタバで人気のシュガードーナツも以前はプラントベースではありませんでしたが、昨年、プラントベースにリニューアルされました。知らずに食べている人もいるかもしれません。

スタバのプラントベース商品の展開があまり世の中に広がっていない理由は、スタバ自体が敢えて大々的に宣伝していないためです。
メニューには分かるようにプラントベースのマークが書かれていますが、小さいため気づかない人もいます。

なぜプラントベース商品があることを敢えて宣伝しないのでしょうか。その理由は、日本の現在のプラントベース市場が関わっているからかもしれません。

日本のヴィーガン・ベジタリアン人口は増加傾向にあります。
しかしプラントベースを求めていない人は「動物性食材を使っていない」と聞くとヘルシーなイメージと同時に「美味しくない」という先入観を持つ人も多いです。

もちろん、動物性食材を使わなくても美味しい商品は豊富にあります。
実際、リニューアルしたスタバのシュガードーナツは以前と変わらない程に美味しいと感じます。

多様な客層を取り込むために植物由来の商品を展開したい。しかし「プラントベース」と表示をすると無意識に避ける人がまだ多い日本の現状。
そのことを踏まえ、敢えて表示を小さくすることでプラントベース関係なく、消費者が求める商品、美味しいと感じてもらえる商品をつくることをスタバは目標としているのではないでしょうか。

栄養士が解説!【プラントベースフード】の魅力とは?

野菜

世界から見ても日本はグルメ国として有名です。しかしながらヴィーガン・ベジタリアン・ハラル・食物アレルギーなど食のマイノリティを抱える人は、日本でプラントベースフードを探すのが難しいことが度々問題になっています。

プラントベースフードの1番の魅力はマイノリティの有無に関わらず全員が同じものを食べられる点です。
カップルやグループで来店したにも関わらず、1人だけ違う料理だったり味の感想を語れなかったりするのは楽しくないですよね。

企業にとってもメリットはあります。
海外の旅行客へのアプローチはもちろん、日本でも関心がある人が増えているため、プラントベースフードを発表することで新たな客層を獲得できます。

また近年はSDGsへの取り組みとしてプラントベース商品を採用する企業も多いです。
動物性食材を生み出すには多くの資源を必要とします。
環境破壊にも繋がるため、積極的にプラントベースを採用していくことは企業のイメージ向上に加えて現に環境破壊を抑える第一歩になるのです。

一方、企業のデメリットとしては導入コストが高く、価格アップせざるを得ない傾向がある点が挙げられます。
大手企業の中にはプラントベース商品を発表したものの、売り上げが伴わないために販売を終了したところもありました。

しかし、日本はこれから需要が増えて市場拡大する途中の段階です。
プラントベースが作られる背景やその魅力がもっと広がり、将来的に肉や魚と同じように選択肢の一つとして「プラントベース」が溢れる世の中になると嬉しいですよね。

食の多様化を目指す日本へ

コロナが明け、日本にも海外旅行者が戻ってきました。
その人数はコロナ渦以前(2019年)の80%以上まで回復しています。
コロナ渦を経て環境保護への関心、健康志向が高まってきたこともあり、今までよりも多様化した社会はもちろん、食についても多様化が求められる時代です。

日本でヴィーガン・ベジタリアン・ハラル対応の商品や店舗が増え、意義を唱えたり否定的な意見を目にしたりします。
しかし、多様化とは決して「良い・悪い」を決めたり、何かを排除したりすることではありません。

私たちは1人として同じ人間はいません。何を選び、どうやって生きていくか、私たちが自由に選択できる未来をつくる行動が多様化へと繋がっていくのです。
同時に、他者の選択・ライフスタイルの否定は多様化とは真逆の行為になります。

また、プラントベースの選択は私たちが住む地球の環境破壊を抑える一歩に繋がります。
企業が進んで商品開発をしたり、店頭で見る機会が多くなったりしている理由の一つには環境保護への取り組みも大きいです。

今後、日本でのプラントベースフードの展開は日本の多様化を測る大事な指標になってきます。これは企業が率先して商品を開発・採用するだけでは発展していきません。

「なぜプラントベースの商品が増えているのか」その理由を私たち一人一人が理解した上で、選択・消費していくことが重要です。
今まで興味が無かったり、避けていたりした人も含め、改めて未来の日本、世界のためにプラントベースについて考えてみましょう。