地球温暖化による海面上昇の影響は、世界各国で問題視されています。
海面が1メートル上昇すると、人気のリゾート地であるモルディブ島は大半の国土が水没する恐れがあるといわれています。
とはいえ、海面上昇による問題はモルディブ島だけに限ったことではありません。
温暖化が進むと日本でも影響を及ぼす可能性があるため、注意が必要です。
今回は、地球温暖化と海面上昇の関係や、日常生活で取り組める対策について管理栄養士の下田さんに解説していただきます。
ライター下田さんについては下記のプロフィールをご覧ください。
,世界中で海面上昇が問題視されている
海面上昇とは後述するさまざまな要因により、海面の平均水位が上がる現象のことです。
過去の記録では、1901年から2010年の約100年で海面が約19㎝上昇したと示されています。
また今後この状態が変わらずに推移すると、21世紀中には約82㎝海面が上昇すると予測されているため注意が必要です。
すでに海抜の低い島国(フィジー諸島共和国など)では、海面上昇により影響が出始めています。
海水が田畑や井戸に入り込んでしまい、農作物が育たなくなってしまったり、飲み水が海水になってしまったりなど、快適な生活を保つことが難しくなってしまいました。
仮に日本で1m海面が上昇すると、日本全国の砂浜の9割以上が失われると予測されています。
40㎝海面が上昇すると、120mの干潟の消失につながるそうです。
そのため、世界や日本の現状を知り、海面上昇についての理解を深めていきましょう。
出典:「IPCC第5次評価報告書の概要」(環境省)
https://www.env.go.jp/earth/ipcc/5th/pdf/ar5_wg1_overview_presentation.pdf
出典:「地球温暖化の日本への影響2001」(環境省地球温暖化問題検討委員会)
https://www.env.go.jp/council/content/i_05/900424936.pdf
海面上昇が起きているのはなぜ?
海面上昇の原因のひとつに地球温暖化が挙げられます。
IPCC第5次評価報告書のデータによると、地球温暖化につながる二酸化炭素濃度は、産業革命前と比較して40%増加したとされています。
世界の平均気温も1880年から2012年の間に0.85℃上昇しました。
ここからは、地球温暖化により海面上昇が起こる理由について解説します。
出典:「IPCC第5次評価報告書の概要」(環境省)
https://www.env.go.jp/earth/ipcc/5th/pdf/ar5_wg1_overview_presentation.pdf
海水の体積の増大
海水の熱膨張がみられると、海面水位が上昇してしまいます。海水の熱膨張とは、海全体の温暖化により海水が暖められることで体積が増える現象のことです。
気象庁の資料によると20℃の海水が1℃上昇すると、体積が約0.25%膨張するとされています。
さらに、海面から500mまで2℃上昇すると、海面水位は25cm上昇します。
地球の約7割は海洋で成り立っているため、熱膨張により海水の体積が増えると、私たちの生活に大きな影響を与える要因になりかねません。
出典:「気候変動に伴う海面上昇量に関する最近の議論」(気象庁気象研究所全球大気海洋研究部)
https://www.mlit.go.jp/river/shinngikai_blog/hozen/dai02kai/pdf/doc2.pdf
氷河・氷床の減少
地球温暖化により気温が上昇すると、陸上の氷河や氷床の融解がみられるようになります。
解けた氷は海に流れ込み、海水の量が増えて海面水位が上昇します。
とはいえ、北極の海氷の融解は、ほとんど海面の上昇にはつながりません。
もともと海水が凍ってできているので、融解しても海面上昇にはつながらないといわれているからです。
しかし、日本よりも広い国土のグリーンランドのように、大陸や島を覆っている氷河や氷床の融解は、海面上昇に結びついているといわれています。
海面上昇による影響
世界の平均海面水位は1900年以降20cm上昇しています。
IPCCの評価報告書によると、21世紀での海面上昇はほぼ確実であると示唆されています。
このまま海面上昇が続くと、生活環境の変化を余儀なくされる方も出てくるのかもしれません。
ここからは、海面上昇がどのような影響を及ぼすのか解説します。
陸地が減少する
海面上昇が進むと陸地が海に浸食され始めます。国土減少につながり、人間が安全に暮らせる場所の確保が難しくなり、農地不足も考えられます。
このまま海面が上昇し続けると、海抜の低い島国が水没する可能性もあるでしょう。
日本も海に囲まれているため、安心はできません。
NASAが公開しているデータを見ると、約100年後に海面が1m以上上昇する場所が確認できます。
日本では東京や大阪、名古屋、福岡、札幌など比較的人口が多い地域での浸水被害のリスクが高いといえます。
特に東京では、江東区、江戸川区、墨田区、葛飾区の海岸沿いは、水没の影響を受けると予測されているため、対策を講じる必要があるでしょう。
出典:NASA Sea level projection tool
https://sealevel.nasa.gov/ipcc-ar6-sea-level-projection-tool
生態系が崩れる
海水の温度が上昇すると、生態系のバランスが崩れる恐れがあります。
例えば、サンゴと共生する褐虫藻がサンゴから離れてしまう原因にもなりかねません。
サンゴから褐虫藻が抜けてしまうと、栄養が十分に行き渡らなくなり白化してしまいます。回復できない場合は死に至る場合があり、サンゴの役割を果たせなくなってしまいます。
サンゴの役割は以下の通りです。
・防波堤を作る
・生物にすみかを与える
・二酸化炭素を吸収する
サンゴの殻は細かい砂となり、高波が陸へ侵入するのを軽減し、台風被害を食い止める働きがあります。
また、サンゴは魚や甲殻類などの産卵の場を提供したり、すみかとなったりすることで、生態系の一部を担っているといえるでしょう。
さらに、サンゴと共生している藻類の働きで、二酸化炭素を吸収して酸素を作り出しています。
海面上昇を招く水温の上昇により、サンゴが死んでしまうと生態系に悪影響を及ぼします。
災害リスクが高まる
海面上昇による災害のリスクもゼロではありません。
高潮や洪水の被害が増えると、海水が生活圏内にも流れ込んでしまいます。
住宅や道路に流れこむなどの災害も懸念されています。
フィジー共和国などのさまざまな国では高潮や洪水被害が報告されており、海抜が低い国では環境難民が発生し安全に住める国への移民が始まりました。
またサンゴの白化は魚の減少につながり、食糧不足を招きます。 このような土地に住む人々は、海面上昇により自国から避難せざるを得ない状況です。
安全に飲める飲料が減少する
海面上昇により、安全な飲料水や産業用水の確保が難しくなる場合があります。
海水が河川に逆流し、河川からの取水が困難になることや、地下水の塩水化が考えられるからです。
水不足は私たちの生活に直結する問題です。
川や用水に海水が混ざると、農地の作物が育たなくなる、淡水魚が生きられなくなるなどの可能性があります。
私たちが海面上昇を防ぐためにできること
海面上昇を防ぐためには、温暖化対策が欠かせません。
温暖化は海面上昇に大きな影響を及ぼすからです。
最後に、私たちが日々の暮らしを守るためにできることをご紹介します。
節電を意識する
地球温暖化を防ぐために、節電を心がけましょう。
小さなアクションでもCO2の排出量を減らすきっかけになります。
節電におすすめの方法は以下の通りです。
・エアコンの設定温度を適温にする
・LED照明にする
・省エネ家電を使用する
・テレビや電気はこまめに切る
・長時間使わない電化製品の主電源やコンセントを抜いておく など
エアコンの設定温度を調整する際、夏であれば扇風機を併用したり、遮光カーテンで日差しをカットしたりすると良いでしょう。
冬も同様に、厚手のカーテンを使用して保温効果を保つ方法もあります。
工夫次第で無理なく節電することは可能です。節電は地球環境のためだけでなく、賢い節約につながるでしょう。
肉食中心の食生活を見直す
肉の大量消費は地球温暖化の原因になりかねません。家畜の飼育には土地や水など、多くの資源が必要です。
飼育に必要な土地を確保するために、森林伐採が必要となるケースもあるでしょう。
また、温室効果ガスのひとつである「メタン」は、牛のげっぷに多く含まれており、その量は二酸化炭素の25倍もの温室効果があるといわれています。
地球温暖化を防ぐために、肉食中心の生活からミートレスの食生活やフレキシタリアンのスタイルを目指すのもおすすめです。
フレキシタリアンのスタイルは肉や魚を一切食べないというような、無理な制限は行いません。
植物性食品を中心に食べますが、肉も魚などの動物性食品も食べられるので、手軽に始められます。
豆腐や豆、大豆ミートなどを上手に活用しながら、楽しく環境にやさしい生活にシフトしてみませんか?
出典:「牛のげっぷと地球温暖化」(国立研究開発法人)https://www.naro.affrc.go.jp/org/nilgs/guidecomic/04/e09.html
まとめ
地球温暖化は海面上昇を引き起こす恐れがあります。
温暖化が進むと海水の体積が増え、氷河や氷床の減少につながるからです。
海面上昇により陸地の減少、生態系や水資源への影響、災害リスクの増加が考えられます。
海面上昇を防ぐために、節電やミートレスの食生活を取り入れてみることをおすすめします。どれも簡単にできる方法なので、ぜひ試してみてくださいね。
【参考記事】
https://news.yahoo.co.jp/articles/92765f06fd11e24049fd2572e4d6da2e059742e8
https://www.am-one.co.jp/warashibe/article/chiehako-20220210-1.html
https://www.jccca.org/faq/15931
https://www1.kaiho.mlit.go.jp/KAN8/sv/teach/murmur.html#:~:text=%E2%98%86%E2%98%85%E6%B5%B7%E3%81%AE%E9%9B%91%E5%AD%A6,%EF%BC%85%E3%82%92%E5%8D%A0%E3%82%81%E3%81%A6%E3%81%84%E3%81%BE%E3%81%99%E3%80%82
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